先日のリコーの出向命令無効判決に少し付け加えを。
日本の法律は決して解雇を厳しく制限しているわけではありませんが、過去の判例が会社側の一方的な解雇に関して常に厳しい判断を下しているため、司法の場での争いとなると簡単には行きません。
しかし、その一方で退職勧奨、つまり「辞めてくれないか」と会社が社員に促すことに関しては比較的寛容です。まあ、寛容というか、退職勧奨を制限する法律が存在しないだけなんですけどね。ただし、いくら法による制限がないとはいえ、公序良俗(民法90条)に反するような方法はダメですよ。
で、今回のリコーの件なのですが、出向命令の前に行われた退職勧奨については「社会通念上相当な範囲だった」と裁判官は判断しています。
しかし、退職勧奨の後に行われた出向命令に関しては、退職勧奨の拒否が理由であると判断し、出向命令自体を無効としたわけです。
退職勧奨同様、出向命令に関しても裁判所は比較的寛容であることは前回も述べたとおりです。おそらく、事前の退職勧奨がなければ、今回のような場合でも出向命令は認められていたはずです。
つまり、退職勧奨を行うことには関して大きな制限はないかもしれませんが、それを労働者が拒否した後は、退職勧奨対象労働者に対して会社が行うことのできる人事労務的な手段がかなり制限され、神経を使う必要があるということ。
我々社労士や会社の経営者・人事労務担当者にとっては、これが今回の事件の判決の一番大きな教訓ではないでしょうか。