社労士試験の合格率というのは、毎年だいたい7~8%で、合格者数3千人から4千人の間ぐらいが平均的な結果です。
しかし、今年の合格率は5.4%。合格者数は2666人。
この数字をかなり衝撃的と捉えている同業者の方も多いようですが、実際にはそんなことはありません。
なんせ、社労士試験の合格率なんて実際には操作し放題。
ご存知のない方に簡単に説明しておくと、社労士試験というのは五肢択一70問、選択式の穴埋め40問のマークシート方式。それぞれで6割から7割ぐらいが毎年の合格ラインとなります。
ただし、科目ごとにボーダーラインが存在し、択一は10問中4問以上、選択は5問中3問以上正解しないと、総得点がいくら高くてもその時点で終わりです。そして、社労士試験とはこのボーダーラインを超えられるか否かの試験と言っても過言ではありません。
特に選択式。
5問中3問ということは6割以上が必要なわけで、択一の4割よりも明らかに厳しく、しかも選択式の問題で出題される問題文の中には、参考書や問題集などで一度も見たことのないような内容が出てくることも珍しくない(その一方で、ほとんど無思考で解ける問題が出題されたりと問題の質にかなりバラつきがあります)。
すべての科目でボーダーラインを上回ることは簡単なようでかなり難しいことなのです。
実際にこの基準を厳格にあてはめてしまうと、年度によっては5%なんて簡単に下回るはずです(実際、今年の選択式の合格ラインは21点。ボーダーラインを厳密に当てはめれば24点以上でないとおかしい)。
そのため社労士試験では、あまりに正答率が低い科目では救済を行っています。殆どの場合は5問中2問ですが、問題によっては5問中1問となります。
要するに、社労士試験の合格率というのは、この救済のさじ加減1つなわけです。
なので、合格率が下がったからといって社労士試験が難しくなったとは簡単に言えません。実際に難しくなっていたとしても、あとでどうにでも調整できるわけですからね。
個人的にはこうした恣意的な制度はほんとうに気に食わない。それに過度に選択式の比重が高い割に毎年出題の質にバラつきがあることも大問題。救済があるからそれでいい、というより救済で合格者数をコントロールしてやろうという意図が満々です。
社労士試験に関しては大きな改革がかなり以前から噂されていますが、こうした厚労省の恣意性や選択式のたった1つの問題でその合格を左右されるような制度を保持することだけは許されないでしょう。