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労務問題(時事) 有給

年次有給休暇の買い取りがナンセンスな理由

2016/06/01

Yahoo!につまらないニュースがでていました。

有給休暇買い取り解禁すれば取得日ゼロの人は年収37万円増も

有給休暇の買い取りというのは、有給をもらう代わりにその分の給与をもらうという制度ですが、現在の日本では認められていません。記事はそれを解禁すれば、取得できなかった分の有給休暇の給与が支払われるため、給与が増えるだろうというお話。

間抜けにも程があるアイデアですよね。しかも、週刊誌の記者のくだらないアイデアかと思ったら、それを大学教授が肯定しているから救えない。

結論から言えば有給休暇の買い取りを解禁すれば、労働者の実質給与は下がります。

なぜか。

例えば、従業員100人ほどで有給取得率0%の会社があったとしましょう。計算を簡単にするため、有給取得時の給与は1日につき1万円としておきましょうか。有給の取得日数は勤続年数によって1年間で10日~20日と法律で決まっていますが、ここでも計算を簡単にするため全員が1年に20日の有給の取得が可能ということにしておきましょう。

有給の買い上げが解禁された場合、この会社はどうなるでしょうか。まず、この会社に限らず有給取得率はまず間違いなく100%になるでしょう。「休暇としての取得率」と「買い上げとしての取得率」の割合がどうなるかはわかりませんが、仮に買い上げとしての取得率が100%だったとしましょう。

その場合、会社からすると1人あたりの年間の給与は20万円上がります。この会社は100人いるので、

20万円×100人

で、年間の人件費に係るコストは2000万円も上昇することになります。

これだけ人件費が上がっても耐えられる会社ばかりならそれでもいいのですが、実際にはそうではないでしょう。

となると、人件費の向上に耐えられない会社では、賃金設計の段階でこの有給休暇の買い上げ分を組み込んだものにしておかなければなりません。

どういうことかといえば、今までは有給休暇を取得してもしなくても年収300万円の人の場合、有給の買い上げをしてやっと年収が300万円になる、という賃金設計にするということです。

こうした賃金制度のなかで休暇として有給を取得すれとどうなるでしょうか。当然賃金は下がります。有給買い上げの場合、「労働日に労働した分」+「有給の買い上げ分」の給与がもらえますが、休暇として有給を取得すると「有給分」の給与しかもらえませんからね。

もちろん、余裕のある会社などではわざわざこうした賃金設計しない会社も多いでしょうが、買い上げてもらったほうが、休暇として取得するよりももらえる給与が増えるのは間違いないわけで、労働者の休暇取得のモチベーションを下げるのに十分な効果を発揮するはずです。

労働問題でなんの疑いもなくこうしたアイデアを出す人間がいるから、「契約社員を5年間雇ったら無期雇用というルールを作れば正社員が増える」という法改正も日本ではできちゃうんですよね~。まったくバカらしい!

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。