解雇

「○ヶ月後までに△△できなければクビだ」という上司の命令は有効か

2013年9月6日

「○ヶ月後までに△△できなければクビだ」

そう上司に言われた部下があれやこれやと、ときには法律や常識や自然科学をも逸した方法で頑張る。

ドラマや漫画なんかでよくある(!?)シチュエーションですが、現実社会ではあまり言わないほうがいいかもしれません。

まず、「解雇予告」という制度に引っかかります。解雇予告というのは労動者を解雇する場合、その旨を30日前に予告するか平均賃金の30日分を支払うという制度のことです。

で、例えば、「1ヶ月後までに契約を3件取ってこなかったクビだ」という条件の場合、この1ヶ月というのは解雇予告には当たらないと考えられます。

なぜなら、解雇予告を受けた労動者というのはまず逃れようのないクビ、という現実を突きつけられるため、それに合わせて再就職への準備などもいろいろ割りきってできるわけです。

一方、上記のような条件を付けられた労動者としてはこの1ヶ月のあいだに頑張ればクビにならないのではという期待を持ちながらの1ヶ月間になります。そのため、仕事を頑張ればいいのか再就職への準備をしていいのかわからず、非常に不安定な地位に置かれることになります。これを解雇予告と同一視するのはちょっと無理があるというわけです。

なので、どうしてもこうした条件で解雇したいなら、1ヶ月後の最終日に解雇予告手当30日分を支払うしかありません。

能力不足による懲戒解雇で労動者をクビにする場合は上記のような条件をつけても解雇予告は不要ですが、能力不足で労動者を解雇するのは非常に難しいのが現実です。

また、こうした解雇条件付きの業務命令というのは、労動者に対する精神的なプレッシャーも大きいため、場合によってはパワハラに取られかねません。

日本では解雇が難しいので、そもそも解雇自体をおすすめしませんが、労動者に対して発破をかける意味合いでやるとしても、こうしたやり方はやめた方がいいでしょう。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 3冊の著書のほか「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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