解雇

解雇予告を行えばだれでも解雇していいのか

2013年8月27日

経営者のよくある勘違いとして「解雇予告手当を支払えばだれでも労働者を解雇できる」というものがあります。

解雇予告手当というのは労働基準法20条に定めのある解雇予告のことです。

解雇予告とは、使用者が労働者を解雇する場合、解雇の30日前までにその旨を労働者に予告するか、その予告に代えて30日分以上の平均賃金を「解雇予告手当」として労働者に支払わなければいけないという定めです。

「解雇予告」と「解雇予告手当」は併用が可能で、例えば解雇予告を15日前に行うと同時に解雇予告手当を15日分支払う、という形でも問題ありません。

実は私も社労士受験生時代は、最初に書いたような勘違いをしていました。

しかし、実際には解雇予告を法律上の正しい手順の上で行ったとしても、労働者を解雇できるとは限りません。というか、その解雇に対して労働者から不当と訴えられた場合、負ける可能性はかなり高いでしょう

なぜでしょうか

それは解雇予告とはあくまで、労働者を解雇する際の「手続き」でしかないからです。

労働者の解雇に対して、労働契約法の16条では「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定めています。多くの解雇の正当性を巡る裁判では、この労働契約法16条の定め(解雇権濫用法理)をクリアできないがために、会社側が負けるわけです。

翻って解雇予告です。

労働者を解雇する際の「手続き」である解雇予告をきちんと行ったからといって、それは「社会通念上相当であると認められる客観的な理由」となるのか、といえば、これはだめですよね。これはきちんと手続きを経た、という理由で警察が何も悪いことをしていない市民を逮捕できないのと同じです

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 3冊の著書のほか「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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