今回は
就業規則は「会社の憲法」?
深い法知識のある社労士は少ないの続きです。
では、結局就業規則とは何なのか、と言えば、平たく言えば「会社の法律」です。なんのひねりもありませんね。これなら「会社の憲法」と言ったほうがカッコはつくのかもしれませんが、そんな恥ずかしい真似は私にはできません。
ただし、法律といってもいろいろあります。
例えば法律には実体法と手続法という分類方法があります。実体法とは「権利・義務の発生・変更・消滅などの要件について定めた法」のことです。何やらよくわからない説明ですが次に説明する手続法と一緒に考えるとわかりやすいです。刑法や民法、商法が実体法に当たります。一方の手続法とは実体法によって発生した権利や義務の実現方法を定めたものです。例えば刑事訴訟法は刑法に違反した犯罪者を裁くための手続法ということになります。
また、公法と私法という分類方法もあります。公法とは国と国民の関係を規定する法律であり、私法とは国民と国民の関係を規定する法律です。前者の代表例は刑法や行政法、後者の代表例は民法や商法になります。つまり、刑法は実体法であると同時に公法でもあるし、民法は実体法であると同時に私法でもあるのです。
では、就業規則はどのような法律なのでしょうか。刑法のように実体法&公法なのか、民法のように実体法&私法なのでしょうか。
答えは簡単です。就業規則は実体法であり手続法であり公法であり私法でもあるのです。
就業規則に必ず規定する項目として制裁規定があります。これは「会社の刑法」とも言えるものですが、一方でその制裁方法、訓戒処分や懲戒解雇などをどのように行うかも記載されているのが普通です。また、就業規則の大半は公法のように会社と社員の関係を規定するものですが、服務規程などには社員同士の関係を規定する項目もあります。
つまり就業規則とは実体法としての要素と手続法としての要素、さらに公法および私法の特性を併せ持つ、非常に包括的で複雑な会社内の法律なのです。このようなものをろくな法知識もなく作っていいのでしょうか? というか、作成することが可能なのでしょうか?