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労働契約 労務問題(時事)

限定正社員は単なる言葉のマジック

2016/04/20

わたし、社会保険労務士として自分の事務所を開いていながら、恥ずかしながらつい最近まで限定正社員というものがどういうものなのかきちんとわかっていませんでした。「勤務地や職務、労働時間を限定した正社員」というのがいまいちピンとこなかったからです。

だって、それって契約社員となにが違うの、って話じゃないですか。単に期間の定めがあるかないかの違いだけで。

現状の契約社員について問題になっているのは、契約更新を重ね契約期間が相応に長く正社員と同様の業務を行っているにもかかわらず、正社員と比べて労働条件が低く、契約満了による退職の不安が常に付きまとっているという点です。そして、そうした契約社員の救済のために今年の4月に契約社員に関わる部分に関して労働契約法が改正されました(否定的な意見が非常に多い改正でしたが)。よって、今後は状況が変わってくるはずです。

ですが、「限定正社員」を使えば上のような状況は簡単に再現可能です。

なぜなら、労働条件を限定しているのが「限定正社員」なのですから、正社員と同様の労働条件にする必要もなければ、同様の給与を支払う必要もないはずです。

しかも、現在「限定正社員」の解雇ルールの制定が検討されています。まだ、内容がはっきりと決まっているわけではありませんが、制定されれば正社員の解雇に比べて緩くなるのは確実。ということは、契約社員同様、使用者からすれば限定正社員の人員整理はかなり楽になるはずです。

それにしても同じような労働実態にもかかわらず、どうして「契約社員」はダメで「限定正社員」はいいのでしょうか。それは曲がりなりにも名前に「正社員」と入っているからでしょう。

正社員と名前がついていれば、労働者はなんとなく安心感を持てるし、企業は世間体を保てるし、政府は非正規ということで逃げられることも多かった社会保険料の徴収を堂々と行うことができます。

しかし、先にも述べたように「労働条件の限定」と「解雇ルール」の2つを兼ね備えた「限定正社員」という存在は「正社員」と名がついていても、限りなく非正規雇用に近い存在だということは理解しておかなければなりません。特に解雇ルールの動向には今後も注意が必要でしょう。

だいたい、限定正社員の解雇ルールを定めるより前に、正社員の解雇ルールを定める方が先なのではないでしょうか。正社員が解雇できないから多くの企業は非正規雇用を雇わなければならないのですから。まあ、正社員の解雇ルールが制定されれば、限定正社員自体が必要なくなるのでしょうが。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。