ユニクロやワタミの就業環境が話題となり、自民党が次回の参院選でブラック企業を公表することを公約に取り入れることを検討するなど、最近では「ブラック企業」の話題が頻繁に飛び交うようになっていますね。
ですが、自民党がブラック企業を公表しようが、あるいは労基署がブラック企業を取り締まろうが、ブラック企業が日本からなくなることは、今のところ考えられません。
なぜなら、ブラック企業には需要があるからです。ドラッグや売春と同じです。需要があるものを取り締まろうとすると、取り締まられる側はそれを止めるのではなく、逃げたり隠れたりして別の方法でそれを提供しようとします。だから、ブラック企業に需要がある限り、ブラック企業は不滅、たぶん読売ジャイアンツよりも不滅です。
では、ブラック企業はどのような層に需要があるのでしょう。
ユニクロやワタミの場合はわかりやすいですね。ずばり「消費者」です。
ブラック企業というのは労働者を安い値段でこき使うことにより商品の値段を下げているのですから。つまり、そうした安い商品につられて、ユニクロやワタミでお洋服を買ったり飲み会を開いたりする人たちはすべてブラック企業に手を貸す悪党ということになります。
また、ブラック企業を求める「企業」というものも存在します。
よく知られているのはテレビ局とテレビ制作会社の関係ですね。莫大な利益のほとんどをテレビ局の社員で山分けして、制作会社にわたるお金はスズメの涙ほど。私はF1以外の番組をテレビで見ないのでよく知りませんが、テレビのニュースでもブラック企業の話題が出ているとしたら、その番組を作っているが制作会社の社員というのは一体どういう気持ちなのでしょうか。
そして、意外にもブラック企業を求める「労働者」というのも存在します。
求める、と言っても非常に消極的な意味です。未だに新卒とそれ以外で出世や昇給等の労働条件で大きな差がある日本では、新卒で入った会社がたとえブラックだったとしても辞めるのには勇気がいります。また、能力が低くブラック企業以外で働けない労働者や転職市場で非常に厳しい立場にある中高年労働者なども、ブラック企業だからといって簡単に辞めることはできません。そういった意味では能力のない人間はいらないと、賃金体系やキャリアパス等ではっきり言ってくれているユニクロは良心的かもしれません。
では、これだけ需要のあるブラック企業をなくすにはどうしたらいいのでしょうか。簡単です。需要を減らして市場で淘汰していけばいいだけです。需要を減らすと言っても、消費者市場では難しい。ユニクロやワタミに対して不買運動をしても限界があります。なので、基本的には労働市場で淘汰していくしかありません。
労働市場でブラック企業を淘汰する、というのは簡単に言えば、「あっ、ここブラックだ」と労働者が思ったときにすぐにその会社を辞められる、ということです。ブラックだと思ったら辞める、なんて当たり前のことのように思えますが、実際には先にも述べたようにその労働者が現在おかれている状況によっては簡単ではありません。また、真面目すぎる日本人の国民性や、仕事を辞めるということに対する(いわれのない)世間の風当たりもそれを邪魔します。
そうしたなかで労働市場でブラック企業を淘汰するには、基本的に現在の厳しすぎる解雇規制を緩和していくしかありません。会社は解雇できないから人を雇わないし、会社が人を雇わないから職が見つからないのです。
このスパイラルを解消する以外にブラック企業をなくす方法は存在しません。