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社労士業務

「若肉老食の国」の社労士業

2016/04/20

池田信夫氏の若肉老食の国という記事はもう2年前に書かれたものですが、今読んでも興味深いものがあります。理由は単純で、ここに書かれている問題がまったく解決されていないどころか、今現在も問題が現在進行形でこじれ悪化している最中だからです。

若肉老食が最も酷いのが現在の年金制度ですね。
一応、厚生労働省は今の若者でも、現在制度が存続し平均余命まで生きれば払った分の保険料の2倍程度は年金となって戻ってくるとしていますが、それはあくまで企業が払っている分の保険料を無視した数字。

しかも、彼らの出しているデータは年金財源の半分を税金で補填している現状も当たり前のように無視していますので、今の若者はよっぽど長生きしない限り、年金保険料の払い損は免れないでしょう(ちなみに、同じ計算をすると今の高齢者は払った保険料の7~8倍が年金になって戻ってくるそうです)。

そんな状況で昨年姿を現したのが「年金交付国債」。

年金の保険料を現役世代に払わせ、足りない分は彼らに借金させてでも払わせよう、というのがこの国債の趣旨でしたが、こんなものに頼らなければならないこと事態、もう何年も「年金制度の破綻」が声高に叫ばれる理由がよくわかります。

また、雇用の若肉老食も見逃せません。

現在の日本全体の失業率は4%前半と、一時期と比べると非常に安定していますが、若年層(15歳~24歳)の失業率は7%を超えていて依然として高いまま。また「15歳~24歳」の年齢層の次に失業率が高いのは「25歳~34歳」です(約5%)。長年少子化が叫ばれ続け、そうした世代もすでにとっくに成人を迎えているのにこの数字です。

今の若者はニートや引きこもりになるやつが多いから、と言う声も聞こえてきそうですが、失業率の計算に彼らのように「働く意欲のないもの」は含めません。そもそも「完全失業者」の定義とは「働く能力と意志をもち、しかも本人が現に求職活動をしているにもかかわらず、就業の機会が社会的に与えられていない失業者」を指します。

また、今年の4月1日からは、改正高年齢者雇用安定法も施行されます。企業に希望する労働者全員を65歳まで雇用義務を課す例のやつです。一般レベルでもかなり話題になりましたが、社労士の間でももちろん注目の的。同様に改正される改正労働契約法とともに、私も今年に入ってから何度この手の研修やセミナーに行ったかわかりません。

60歳で定年だったはずの労働者を65歳まで雇うということは、それだけお金がかかるということです。

一応、60歳定年者を65歳まで雇う際の労働条件について、法律上は基本的に何も定めがないので、60歳定年を迎えた労働者を65歳まで雇う契約を結ぶ際に最低賃金まで下げる、あるいはワークシェアリング制度を用いて労働時間を減らしてしまっても構わないことになっています。

それでもこの法律の改正のしわ寄せが若年層に向かうことは避けられないでしょう。企業がかけられる人件費の額が決まっている以上、高齢者を最低賃金で雇おうとワークシェアリングで雇おうと、人件費総額を圧迫することに変わりないからです。

さて、皆さんご存知のとおり年金も雇用(というより労務)も社労士の守備範囲です。

では、このような状況にある現在の日本で社労士に何かできることがあるかといえば、正直ほとんどありません。年金に関しては基本お手上げ。労務管理にしても、せいぜい、個々の社労士が顧問先に若年層を優遇してもらえるようコンサルティングすることくらいです。

一応、社労士が政治に対して働きかけを行う団体として政治連盟も存在してますが、こちらはまさに社労士の社労士のためともいえる団体。社労士の職域を守りそれを拡大するために存在しているので、世のため人のために存在しているわけではないので、この件に関わることはないでしょう(一応言っておきますが、そういった団体は社労士に限らず他の士業にも存在しています)。

ただし、この状況が今後数年のうちに大きく変わることは間違いないでしょう。

それは上にも書きましたが、「年金財政の破綻」、というか「財政」そのものの破綻がほとんど避けられない状況にあるからです。私個人の考えでもそう言わざるをえません。

社会保険労務士がこんなことを言っていいのかと言われそうですが、別にかまいません。
社労士法の第一条に、社労士は「労働および社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与」せよ、見たいなことが書かれていますが、じゃあ上記のよう現状を無視し、厚労省の言うことを丸呑みして「年金制度は破綻しませんよ。なんたって100年安心なんですから」と言えばいいのでしょうか。社労士法第十六条では社労士に、社労士の信用を傷つけるような行為の禁止、いわゆる「信用失墜行為の禁止」を定めています。

どちらにせよ、この程度、全然問題ないでしょう。
「年金なんて破綻するから、保険料なんて払わなくていい」
とか言ってるわけでもあるまいし。
(というか、念のため言っておきますが、破綻してもしなくても保険料はきちんと払った方がいいですよ)

おもしろいことに、この「年金財政の破綻」という話題。相手の年齢によってリアクションがまったく違います。

まず、私と同年代に当たる20代や30代。彼らとそういった話をすると、そもそも年金に興味がない、という場合を除けば、割と普通に、というよりほとんど既成事実のように話が進みます。「保険料を払うなんてバカ」みたいな2chみたいなことは皆さん大人ですし言いませんが、とりあえず誰もが当たり前のことと考え過ぎていて正直会話が弾みません。


逆に、40代後半から50代以上の相手はどうか、と
いうと、話をしても露骨に嫌な顔をされるか、まったく相手にされないのでそもそも会話が成り立たちません。なので、もうしなくなりました。

まあ、それはそうですよね。そのぐらいの年齢の方はすでにかなりの額の保険料を納めていて、しかもそのゴールが徐々に見えつつある。なんだったら、その年金額を基に老後のプランをすでに練り始めているかもしれません。しかし、今の年金制度に何かあったらその根本から揺らいでしまいます。

年金制度の崩壊はある意味、トランプゲーム「大富豪」の「革命」みたいなものです。つまり数字の強弱が反転してしまうわけです。

しかし、それがどのような形になるのかは破綻してみるまでわかりません。ルールの中の「革命」はあくまで予定調和。結果は決まっていますが、現実はそうは行きません。

大幅に年金額を減らされるのは間違いないにしても、では支給開始年齢はどうなるのか。件の池田信夫氏はTwitterで年金制度は「長生き保険」なので、平均寿命から支給すればいいとまで言っています。

また、破綻したからといって、若者の生活が楽になるとも限りません。下手したら保険料の料率が今以上となり、給与の少ない若年層は一層苦しむことにもなりかねません。それに労務に関しては、そういった破綻が若者にプラスに働くことはなかなか考えにくいです。

どちらにせよ、この件について社労士にできることが何もないことには変わりません。

投げやりに聞こえるかもしれませんが、事実です。

また、勘違いしてほしくないのは、私は決して年金を含む財政の破綻を望んでいるわけでもありません。年金や財政の破綻が若者にとって必ずしもプラスではないことは先にも書いたとおりよくわかっています。

ただ、なにより重要なのは物事が起こった後に何ができるかではないでしょうか。

その「何」を今予想することは、先のリーマンショックやバブル崩壊を見る限り不可能かもしれませんが、心の準備だけでもしておくに越したことはありません。リアクションは速ければ速いほど、そしてできれば正確であるほどいいわけですから。

これは社労士もそれ以外の方も同じですけどね。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。