労働時間

勤務間インターバル規制が始まると労働基準監督署の取り締まりは厳しくなる

2016年7月12日

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名古屋のとある監督署の画像ですが、本編とは直接関係ございません

先日も紹介した勤務間インターバル規制、

EUではすでに常識で、日本でも来年からは助成金が出る予定となっています。

これに加えて、今回行われた参院選でどの党もこの「勤務間インターバル規制」を法的義務とする公約を掲げておりました。

では、この勤務間インターバル規制が法定化されるとどうなるのでしょうか。

間違いなく言えるのは、労働基準監督署や監督官の労働時間の取り締まりが楽、効率化されます。つまり、労働者に長時間労働を強いる会社は取り締まられやすくなるはずです。

 

現行の労働時間規制は例外だらけで骨抜き状態

なぜ、勤務間インターバル規制が法定化されると、監督署の取り締まりが楽になるのでしょうか。

現在の労働時間規制では、労働者を働かせられるのは1日8時間、1週40時間までです。

これ以上働かせるのは、例え残業代を払ったとしても違法です。

しかし、違法とならないための抜け穴があります。それが36協定。

時間外・休日労働について。1日8時間、1週40時間を超えて働かせる場合はこの36協定を労使で結び、監督署に提出する必要があります。

ただし、36協定を結んだからといって、いくらでも労働時間を延長できるわけではありません。限度時間というものが決まっていて、時間外労働をさせられるのあh1カ月45時間、1年で360時間までと決まっているからです。

しかししかし、36協定に「特別条項」をつければ、原稿の制度では、この限度時間すら年6回までなら超えて働かせることができます。

要するに、現行の制度は、1日8時間、1週40時間という原則となる規制自体は厳しいものの、例外だらけで骨抜きになっているわけです。

 

例外だらけなので取り締まりも困難

で、こうした骨抜き状態なので、監督署からすると、非常に取り締まりづらいわけです。

例えば、36協定を出さずに労働時間が1日8時間、1週40時間超えていたとしても、とりあえずは36協定を出せとしか言えません。

超えてるから即逮捕・送検なんて無理なわけです。

あるいは36協定は出しているけど、協定で定めている時間よりも、実際の労働時間が長い場合は、協定を変更しろとか、特別条項をつけなさいとしか言えない。

もちろん、監督署がいくら指導してもこうした状況が続くのであれば、逮捕・送検といった奥の手を使うこともあるのでしょうが、例外が多いことにより、「迅速な」取り締まりというのは事実上不可能となっています。

特別条項は年6回まで、というルールを順守してるかを確認するには最低7カ月(7回連続で特別条項を使ってたらアウト、という意味)はかかるわけですからね。

 

勤務間インターバル規制はシンプル

しかし、勤務間インターバル規制となると、話は違ってきます。

なぜなら、きちんと勤務と勤務のあいだにインターバルを置いているかなんて、タイムカードを見ればわかる。

これは給与明細見れば、最低賃金法に違反してるかどうかすぐわかるのと同じくらい明確です。明確なので取り締まりもしやすい。

そして、36協定がある現在のように、残業させるならあれしてこれして、みたいな段階をいくつも踏む必要もない。

例え、1回インターバルを開けてないことでお情けもらっても、2、3ヶ月後も、そのままインターバルを開けてないとわかれば、この会社はインターバルを開ける気はないんだと監督署も判断し、本気を出すに違いありません。

 

以上です。

現状の日本でのインターバル規制は、法律上、まだ影も形もないので、実際どうなっていくかはわかりませんが、現状の例外だらけの規制よりもシンプルな分、監督署の取り締まりも厳しくなると予想されます。

会社としてきちんと対応できるよう、今からでも、労働時間を減らしていく努力が必要でしょう。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 3冊の著書のほか「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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