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【悲報?】「最低賃金、時給1000円」は必ず達成される。その時会社はどうするか?【朗報?】

2016年6月28日

参院選で各政党が掲げる労働政策の共通点として

「最低賃金、時給1000円」「非正規の正規への転換」「同一労働同一賃金」「インターバル」

の4つがあると、以前の記事で書きました。

つまり、選挙戦の結果がどうなろうと、これらの政策は何らかの形で達成される可能性が高いということになります。

ということで、このブログではこれらの政策を1つずつ解説していきたいと思います。

今回は「最低賃金、時給1000円」について。

 

最低賃金と他の統計データに関連性なし

労働者の方には朗報?で、会社にとっては悲報?なのかもしれませんが、いつくらいになるのかはわかりませんが、将来的には日本の最低賃金が1000円以上になることは、もう避けられない未来です。

どれくらい避けられないかというと、以下の表を見るとその片鱗が垣間見られます。

最低賃金

見てわかるように最低賃金というのは、今まで上がることはあっても、下がることはなかったわけです。

参考までに実質賃金指数も載せてみましたが、実質賃金の伸び縮みに合わせているわけでもない。

(実質賃金指数を最低賃金の参考にすると仮定し、年を1つずつずらしても、17円上がった平成22年と、指数が2.6%下がった平成21年などのようにチグハグさは変わらない)

というか、最低賃金が上がっても実質賃金は基本下がってるってどういうことよ?

 

ちなみに物価と比較しても、相関関係は見られない点で実質賃金指数と同じ。

最低賃金物価1

消費税が上がった26年は物価指数の伸びも大きい

もちろん、様々な統計上データを元に最低賃金上げ幅は決まっているわけですが、それはあくまで上げ幅を決めるためだけで、上げるか下げるかを決めているわけではないわけです。

 

最低賃金は政府の意向で上がり幅が決まる

じゃあ、どうやって決まってるかといえば、それはもう政府の意向です。

平成20年、西暦で言うと2008年ですが、この年に何があったかといえばリーマン・ショックです。この年に最低賃金が16円も上がってること自体は、まあいいんですよ。リーマン・ショックがあったのって、その年の最低賃金が決まるのとほぼ同じタイミングで、それまではどちらかというと日本は好景気だったから。

しかし、その翌年やその翌々年も2桁円で上がっている理由は何かというと、平成20年6月20日に有識者等のあいだで合意された「中小企業の生産性向上と最低賃金の中長期的な 引上げの基本方針について(リンク先PDF)」があったから。

この基本方針では、今後5年間は最低賃金を引き上げるとありました。だから、経済事情なんてお構い無しで最低賃金は上がってる。

最近の高い上昇率にしたって安倍政権の「一億層活躍プラン」の一貫です。

もともと最低賃金の引き上げという政策は、企業には嫌われることがあっても、一般的大多数の国民に好かれる政策です。

よって、選挙関係なく、政治家からしたら上げたい、国民だって上げてほしい、利害が一致しているので、あとはいくら上げるかだけが、日本の最低賃金を実質的に決定している最低賃金審査会の仕事なのです。

 

「最低賃金1000円」は避けられない未来

最低賃金については上がることだけは決定事項で、あとはどれだけ上げるかを決めるだけ、という状況がすでにあるなかで、各政党が「最低賃金、時給1000円」以上を掲げている、ということが何を意味するのかは火を見るより明らかでしょう。

そう遠くないうちに最低賃金は時給1000円まで引き上げられます。

ここ数年の愛知県の最低賃金は20円前後で上がっていますが、これでは、達成まであと最低6~7年はかかるので、倍増されてもおかしくない。

これによって、大きな影響を受けるのはおそらく都市部ではなく地方ではないでしょうか。

時給1000円でも人を雇えるところはいいですが、そうではない場合、最悪会社が潰れてしまいます。それが増えれば、ただでさえ事業所の数が少ない地方で、人件費を理由とする倒産が増えると、いよいよ働く場所がなくなってしまう気がします(地方の詳しい事情は正直わからないので、これはあくまで想像)。

都市部は現状人不足、つまり、仕事余りの状態なので、すぐにそうしたことにはならないでしょうが、人件費の高騰に堪えられなくなれば、アメリカのマクドナルドが接客にロボットの導入を考えているようなことを行う企業は必ず出てくるはずです。

そうなれば、地方とは違う形で人が行う労働は減っていくのかもしれません。

 

そうした経済や市場全体のことはさておいても、選挙後に行われると言われている労働基準法改正では、いよいよ中小企業でも残業時間が60時間を超える場合、現在の2割5分以上の割増率が5割以上に上がると言われています(ただし、3年の経過措置がある模様)。

そうなったときに時給が850円なのと1000円なのとでは、人件費も大きく変わってきます。

最低賃金の上昇と長時間労働時の割増賃金率の増加に備えて業務を効率化し、労働時間を減らしていかないと、近い将来、人件費によって会社の運営が成り立たなくなる可能性があります。今のうちから十分な準備が必要です。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 3冊の著書のほか「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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