書評

【書評】過去から未来へ伸びる川の流れを知るための一冊【未来に先回りする思考法 佐藤航陽】

2016年7月1日

以前の記事にも書きましたが、本を読んで書評を書くことを義務化しました。

で、今回読んだのは佐藤航陽氏の「未来に先回りする思考法」。去年でた本ですが、今更読みました。ていうか、出版年より内容とか評判を重視して本を選ぶんで、今後も全然こういうことはあると思います。

佐藤氏は早稲田大学を1年で中退して、二十歳で起業。アプリマネタイズの支援や決済プラットフォーム「SPIKE」を運営する株式会社メタップスの代表を勤め、メタップスは現在世界8カ国で事業を行っています。

経歴を軽く見ても凄そう、というのはわかると思いますが、本書は間違いなく「凄い」ですよ。

(経歴をしっかり知りたい人はこちらを スケールが桁違い!世界で躍進するメタップス佐藤航陽の経歴書)

 

物事には本質があって流れがある

この「未来に先回りする思考法」という本、なんとなくタイトルが胡散臭い自己啓発本っぽいですが、中身はもう理路整然中の理路整然。しかも理路整然としているのに、本の中では理路整然すらも理路整然と否定する。

別に読んでる人のゲシュタルト崩壊を狙っているわけではないですが、じゃあ、この本でいう「理」とはなにかといえば、過去から未来に向かては、法則めいた大きな流れがある、というもの。

で、「未来に先回り」するなら、この「大き流れ」を理解し、流れの先で待ち伏せていればいいということ。

しかし、「大きな流れ」は目で見ることはできません。

では、筆者はどのようにその「大きな流れ」を掴んでいるかといえば、様々な物事の歴史から掴んでいるわけです。過去に学び未来に活かす、というわけ。

本書では筆者が大きな流れを知るために得たと思われる知識、筆者の本業であるITテクノロジーやビジネスシーン以外にも、国家の成り立ちや政治、通貨などの歴史的背景や物事の本質を惜しげも無く披露されています。

 

筆者が考える通貨の価値とは

例えば本書に出てくる「貨幣」の話で言うと、貨幣とはもともと物の価値をやりとりするための媒介でした。物々交換では非効率なので、貨幣という誰が見ても「価値」のわかるもので代替し、産業革命後は資本主義の興隆によって貨幣の価値はどんどん高まりました。

でも、今や貨幣はひとつの選択肢でしかなくなったと筆者は言います。なぜなら「他者からの注目」という「価値」なら今やFacebookのいいねやTwitterのRTで可視化できるようになっている。

そして、こうした価値を広告などでマネタイズすれば、資本に変えることは容易。だからこそ、Facebookの時価総額はトヨタをも大きく上回るわけです。

大切なのは貨幣ではなく価値。それは今も昔も変わらないけれど、テクノロジーによって可視化できる価値が増えた現在では、貨幣は確かに選択肢の一つでしかないのかもしれません。

 

今を知るのにも役立つ一冊

でね、このブログを読んでる方で、正直、「未来に先回りしたい」人がどれくらいいるかはわかりません。

ただ、少なくとも今という時代を知るためだけでも、この本を読む価値があると思うんですよ。それは本書の意図とか筆者の意図とは外れるかもしれませんけどね

ただ、ITを中心としたテクノロジーの発達や社会や国際情勢の変化などについていけてなくて、漠然とした不安があるって人、少なくないと思います。

で、この本を読んだからってそうした不安がなくなるかはわからないけど、少なくとも「漠然とした」不安ではなくなると思います。

なぜなら、いまわたしたちがいるのは過去から未来へ続く「大きな流れ」の途中でしかないということがわかるから。

過去から現在にどうしてこうなったのか、現在から未来へどうなっていくのか、それがわかれば、漠然とした不安というものは漠然とはしなくなるわけです。

本書ではその「大きな流れ」がわかりやすく論理的に示されているので、今という時代のことを知るのに非常に役立つわけです。

僕の読んだのが遅くて、1年前に出た本ですけどまだまだ全然古びてないので、今、漠然とした不安に襲われている人におすすめです。

でも、この本の意図にそって言うなら、未来に向けて成功したいのなら、だからといって、今という時代にとらわれすぎてはいけませんよ。

 

…、いやー、佐藤氏はわたしの1つ年下なので、ほぼ同世代ということになりますが、どっかの社会学者と同世代扱いされるのは死んでもゴメンですが、佐藤氏とはぜひぜひと思ってしまいますね。

それくらい今やってることや、本書で垣間見られる知識量は飛び抜けてます。

未来に先回りする思考法

未来に先回りする思考法

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 3冊の著書のほか「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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