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理想は内製、だけれど・・・
業務として就業規則の作成を行う人間である社労士の川嶋がこんなことを言ってしまうのはなんですが、就業規則というのは、内製できるのであれば内製してしまって何も問題ないと思っています。
会社の中の人間が作成するほうが、会社の内部の事情をわかっている分、会社に合った就業規則を作成できるからです。
たとえ顧問として、常に顧問先の労務相談を受けていたとしても、部外者である社労士には見えない会社の真の内情というものもあります。よって、
「最適の就業規則、作成します」
というのが、川嶋事務所の就業規則作成の考えなので、内製できるのであれば内製した方がいい。
コンプライアンス面で不安
しかし、内製する場合、問題点が3つあります。
1つはコンプライアンスの面。
就業規則には法律上、必ず定めておかないといけないことがあります。また、労働時間や有給などの規定も法律に則ったものでなければなりません。
よって、社内に、勤務社労士や、社労士試験合格者のような、労働法その他、労務管理に必要な法律の詳しい人がいないと、せっかく社内で就業規則を内製しても、コンプライアンスの面で不安があります。
法律で決められている条文とそうでない条文
2つ目は、条文の区別です。
就業規則は法律で定められた範囲内で規定しないといけない部分と、会社が比較的自由にルール作りをしていい部分があります。労働時間や有給は前者、服務規程や懲戒規定は後者です。
ある程度、労働法や就業規則に対する知識がないと、どの条文がどちらに当たるのか判断できないかと思います。
法律内で定める必要のある部分を、会社の好き勝手なルールで作成してはコンプライアンスに問題が出ます。
効果のない条文
3つ目は条文の有効性です。
就業規則は会社が主導権を持って作成できる、会社の法律です。
しかし、だからといって「社長が気に入らない奴はクビ」なんて、条文を就業規則に入れても、労働者と争いごとになってユニオンとの労働紛争や裁判になったらまかり通りません。
ルールとして入れていいものかどうなのか、そして、入れるとして書き方が正しいかどうかは、就業規則作成のプロにしかわからない部分です。
内製のメリット
- 会社の状況がわかっているので、会社に合った規則が作成できる
内製のデメリット
- コンプライアンス面に不安
- 条文の妥当性に不安
社労士外注のメリット・デメリット
社労士は就業規則を作成のプロですから、内製のデメリット・不安要素については完全に払拭できる点が、外注のメリットと言えます。ただ、外部の人間のため、会社の内部事情を完全に把握することは難しいのも確かで、こちらはデメリットと言えるでしょう。
つまり、内製のメリットとデメリットと、社労士への外注のメリットとデメリットは真逆の関係にあるわけです。
よって、内製のメリットと社労士に外注することのメリットのイイトコどりをするのであれば、社労士に外注する前に、内製して、それを社労士にチェックしてもらうという手もあります。
どの社労士でも同じ? ということはありません
では、就業規則を内製せずに、社労士に外注する場合、どの社労士に作成してもらえばいいのでしょうか。
顧問の社労士がいる場合、基本的には、その顧問の社労士に頼むのが一番かと思います。顧問の社労士以上に、あなたの会社のことを知っている社労士はいないはずです。
一方、顧問の社労士がいない場合や、正直委託替え等を考えていて、あまり関係が良好でない場合はどうでしょうか。
本をたくさん出していたり、メディアに多く出ている有名な社労士の先生を頼るのもいいでしょう。ただし、大きな社労士事務所の場合、実際に就業規則を作成するのは、代表社労士ではないことがほとんどであることは覚えておくべきでしょう。また、価格も高額です。
知名度以外の判断材料
知名度以外で判断する場合の1つの基準は「あなたの会社の業種」です。
社労士の中には、業種特化していて、その業種・業界にあった就業規則を作成することを専門とする方もいます。
また「今ある問題、将来起こりうる問題を洗い出す」で洗いだした「問題点」から社労士を選ぶ方法もあります。
残業時間を減らしたいのであればそういったことが得意な社労士に、IT関連の取り扱いに不安があるのであればITに強い社労士に、といった具合です。
社労士の側からするとあまり気持ちのいい方法ではありませんが、複数の社労士に当って、その中から選ぶのもまた手でしょう。
こう言ってはなんですが、同業者と会う機会や話す機会もありますが、同じ社労士でも就業規則に関する知識等は正直ピンキリです。
必読!失敗しないための就業規則作成マニュアル一覧
就業規則作成・変更のために準備すべきこと
- 就業規則とは? 就業規則にできること、できないこととは?
- 就業規則の作成義務があるのは労働者の数が10人以上の事業場
- 今ある問題、将来起こりうる問題を洗い出す
- 就業規則を内製するか、社労士に外注するか