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助成金 労働法

熊本地震による休業が「使用者の責」ではないと決めつける前に、雇用調整助成金受給の検討を

2017/02/02

労働基準法では、使用者に責任のある形で労働者を休ませた場合、会社は平均賃金の6割以上の休業手当を支払う必要があります。

(休業手当)
第二十六条  使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

この使用者に責があるかの判断については、会社に対してかなり厳しく、例えば、会社自体にはなにもなくて、取引先に何か問題があったりで休業を余儀なくされた場合でも、使用者に責があるというふうになります。

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まあ、言ってしまえば、一件や少数の取引先に依存しているのも、使用者の責だということでしょう。

しかし、さすがに今回のような大規模な地震で休業する場合は別です。(ただし、「別」とするにはあらかじめ「使用者の責に帰すべき事由に当たらない場合は休業手当は支払わない」みたいな規程が就業規則に必要)

 

地震で会社の施設や設備に直接的な被害を受けた場合

厚生労働省では、東日本大震災のときに、地震により事業場の施設に被害を受けるなどして休業を余儀なくされた場合について、「使用者の責に帰すべき事由」による休業に当たるかどうかについて、以下のように判断しています。

【Q1-4】今回の地震で、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け労働者を休業させる場合、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」による休業に当たるでしょうか。

[A1-4]労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。ただし、天災事変等の不可抗力の場合は、使用者の責に帰すべき事由に当たらず、使用者に休業手当の支払義務はありません。ここでいう不可抗力とは、(1)その原因が事業の外部より発生した事故であること、(2)事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。今回の地震で、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け、その結果、労働者を休業させる場合は、休業の原因が事業主の関与の範囲外のものであり、事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故に該当すると考えられますので、原則として使用者の責に帰すべき事由による休業には該当しないと考えられます

地震に伴う休業に関する取扱いについて(厚生労働省)

上記のQ&Aはあくまで東日本大震災のときのものですが、今回の熊本地震においても同様に判断されると考えられ、「事業場の施設・設備が直接的な被害を受け」たことが休業の原因の場合、「使用者の責に帰すべき事由」による休業には当たらないと考えられます。

 

地震の被害を受けた取引先の休業による休業の場合

一方で、今回の地震で被害を受け休業した会社の取引先、などのように、地震で直接的な被害は受けていないものの、取引先の影響で休業を余儀なくされた場合は、「使用者の責に帰すべき事由」による休業に当たる可能性があるので注意が必要です。

【Q1-5】今回の地震により、事業場の施設・設備は直接的な被害を受けていませんが、取引先や鉄道・道路が被害を受け、原材料の仕入、製品の納入等が不可能となったことにより労働者を休業させる場合、「使用者の責に帰すべき事由」による休業に当たるでしょうか。

[A1-5]今回の地震により、事業場の施設・設備は直接的な被害を受けていない場合には、原則として「使用者の責に帰すべき事由」による休業に該当すると考えられます。

ただし、休業について、(1)その原因が事業の外部より発生した事故であること、(2)事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たす場合には、例外的に「使用者の責に帰すべき事由」による休業には該当しないと考えられます。具体的には、取引先への依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、災害発生からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、判断する必要があると考えられます。

地震に伴う休業に関する取扱いについて(厚生労働省)

地震で直接的な被害を受けていないけれど、地震の被害を受けた取引先の影響で休業せざるをえない場合、原則「使用者の責に帰すべき事由」による休業に該当します。

しかし、「取引先への依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、災害発生からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案」したときに「通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故」と判断できる場合は「使用者の責に帰すべき事由」による休業に該当しないことになります。

非常にわかりづらいというか、具体的にどう判断していのかが全くわからん文章ですね。

結局、この辺のことについて厚労省は指針を示すくらいしかできず、最終的には裁判にならないとわからないので、こういう書き方になっているのだと思います。

ただ、取引先都合の休業を「使用者の責に帰すべき事由」に当たらないと判断して休業手当を支払わなかった場合、あとでその分の賃金を支払えと裁判で訴えられるリスクがあるので、地震で直接的な被害を受けていない場合、あまり強気に「使用者に責はない」と言い切るのはやめておいたほうがいいかと思います。

 

地震による休業には雇用調整助成金が活用できる

とはいえとはいえ、休業手当がいくら通常の賃金の6割とはいえ、休業中の会社にとって休業手当は大きな負担です。

そこで厚労省は、今回の地震による経済的な影響で休業を余儀なくされた事業所に対して、特例的に雇用調整助成金を支給することを発表しています。

雇用調整助成金とは、会社が労働者に支給する休業手当のいくらかを補助する助成金です(詳しくはこちら)

今回、雇用調整助成金の支給を受けられる事業所の条件は以下のとおり。

  • 交通手段の途絶により、従業員が出勤できない、来客がない等のため事業活動が縮小した場合
  • 事業所、設備等が損壊し、修理業者の手配や部品の調達が困難なため早期の修復が不可能であり生産量が減少した場合
  • 風評被害により観光客が減少したり、農産物の売り上げが減少した場合

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なので、今回の地震で間接的な被害を受けられた企業は、取引先都合の休業は使用者の責ではない、と早まった判断をして賃金未払いによる訴訟リスクを高める前に一度、雇用調整助成金の受給について検討されたほうが良いかと思います。

 

休業手当をもらえない被災者は可哀想?

最後に余談

労働者の側からすると、地震で被害を受けたのに休業手当ももらえないなんて酷いじゃないか、と思う人もいるかもしれません。(特に、会社が地震で直接的な被害を受けた会社の労働者の場合)

しかし、厚労省は既に地震の影響による一時帰休で、一時的な離職を余儀なくされた労働者に対して、特例的な基本手当の支給を行うとしています。

また、震災時には災害救助法や被災者生活再建支援法など、別の法律で被災者に対して支援金などの補助が行われます。

それらだけで被災者への支援が十分かどうかはまた話は別ですが、ただ、被災者同様に会社だって地震による影響を受けているわけですから、休業手当という形で、どちらか一方により大きな負担をかける、ということが必ずしも正しいことだと、わたしは思えません。

今回の地震から復興を果たしているあいだに、休業手当の支払いで会社がバタバタと潰れてしまっては、復興後の熊本で働く場所がなくなってしまいます。

ふるさとチョイス

以前も紹介しましたが、被災地支援はふるさと納税がオススメです(わたしも活用しました)

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。