副業・兼業

社員の副業・ダブルワークに対して会社が決めるべき7つのこと

2016年4月19日

過去4回にわたって、副業(ここではいわゆるダブルワークのことを指す)と労働法・社会保険法の関係を見てきました。

ただ、法律ごと、制度ごとからの視点で解説したので、結局、会社としてなにをすればいいのか、わかりづらい内容になってしまっていましたね。

この辺、ものの見方考え方が完全に社労士目線になってしまっていました。反省です。

というわけで、今回は、会社側の視点から、社員の副業に対してなにをすべきか解説していきたいと思います。

 

①副業を認めるかどうかを決める

会社として副業を認めるかどうか決めないことには他のことなど決めようがないので当然ですね。

しかし、既に述べたように、

副業することを全く認めないというのは憲法で認められた「職業選択の自由」を侵害することになる。

なので、実務上はほぼほぼ認めざるをえない。ただ、無条件に認める必要はないので、問題となるのはどこまで認めるか、ということになります。

 

②認める方式を決める

認める方法とは、許可制にするのか届出制にするのか、あるいは完全解禁で社員の副業に会社は関与しないのか、という社内手続きの話です。

許可制と届出制は同じことのように思う方もいるかもしれませんが、実は違います。

許可制の場合、会社の側に「許可」「不許可」の裁量があります。裏返せば、労働者から副業の申請がある度に許可するか不許可するのか判断しないといけないわけです。

一方、届出制の場合、その届出が会社が要求する条件を満たしている場合、その届出に対して会社が判断する余地はありません。その分、あらかじめ、届出の条件をきちんと定めておけば、労働者からの副業申請の際の判断のプロセスを省略することができます。

なので、その都度判断したいのであれば許可制、ある程度副業を認めるプロセスを自動化したいのであれば届出制ということになります。

完全解禁の場合、会社はなにもしなくていいので楽ですが、副業先が競業かどうかもわからなければ、副業中のおおまかな労働時間もわからない。

わからないまま放置しているのだから、副業先での労働への影響が本業に出ても、どこまで会社が労働者に責任を問えるかはわからない。

最低限、労働者が会社の外でどんな副業をしているのか知るためにも、許可制もしくは届出制にするのがベターでしょう。

 

③認める業種の範囲を決める

当然、会社の競業となる業種での副業はダメ。これに関しては就業規則に「競業避止」という項目で禁止している場合がほとんどではないでしょうか。

また、競業以外にも、水商売や性風俗など、会社として認められないような業務もあると思うので、そうした会社として副業として認められない業種について、あらかじめ決めておく必要があるでしょう。

この場合、認める業種を羅列するより(ポジティブリスト方式)、認められない業種を上げたほうが(ネガティブリスト方式)の方が、労働者の職業選択の自由を過度に制限しないという意味で好ましいでしょう。

 

④会社が認める、副業先での労働条件を決める

ダブルワークタイプの副業では時間外労働や過重労働がついて回ります。また、雇用保険や社会保険の加入条件とも関わります。

なので、副業の許可要件として会社として認められる、副業先の労働時間を定めておいた方が、会社のリスク、労働者の健康面、どちらから考えてもベターかと思います。

もちろん、労働者の意向や副業先の都合により、会社の定めた時間以上に働いてしまう場合もあるかと思いますが、いざ労働時間や過重労働で副業が問題になった時に、「会社はこの範囲でしか認めていなかったのに労働者が(副業先が)」と会社として主張することができます。

労働時間と労働者の健康つながりで言うと、深夜業(午後10:00~午前5:00)についてもある程度基準は定めておきたいところ。深夜業は1日2時間まで、とか1週10時間まで、とかですね。

 

⑤自社の労働が本業なのか副業なのかを決める

本業か副業かで、雇用保険の加入の有無が変わってきます(本業で入る)。

ただ、通常、というか常識的に考えれば労働者の義務である労務提供や誠実義務等は、本業側の方がより多く認められるはずなので、どちらなのか、はっきりと定めておいたほうが良いでしょう。

 

⑥手間が増えることに対する覚悟を決める

最後に「決める」と入っているだけで、ちょっと意味が変わってますがお気にになさらず(笑)。

許可制にしろ届出制にしろ、事務をやる側からすると確実に手間。

加えて、労働者が副業先でも社会保険に加入するとなると、社会保険料を本業先と副業先とで按分しないといけなくなるので、その分の手続きや給与計算が面倒になります。

ただ、これに関しては、今後、マイナンバーが普及すると同時に、みんなが副業せざるを得ない時代になっていくと、どうやっても避けられない部分ではあるので、単純に覚悟を決めてください。

 

⑦就業規則に副業条項を入れることを決める

就業規則に副業条項入れましょう。副業条項ならびに副業に関する社内制度の整備なら名古屋の社労士事務所「社会保険労務士川嶋事務所」ですよ!

…。

まあ、営業はさておき(笑)。

ただ、社労士が自分のサイトのブログでこんなこと書いてるから笑い話みたいになっていますが、副業を認めるかどうか、どれくらいの範囲で認めるのか、というのはれっきとした労働条件なので、就業規則にきちんと定めを置く、もしくは労働契約できちんと労働者と合意を得ておかないことには、労働者への拘束力は持たないと考えられます。

 

以上です。

副業したいと言ってくる人が出てきてその時にオロオロしたり、既に副業していてやめろとも言えない、みたいなことになると、会社として冷静な判断ができなかったり、なし崩し的に不本意な形でいろいろなことが決待ってしまう可能性があります。

労務管理の基本は「先手を打つこと」。

「拙速は巧遅に勝る」と孫子にもありますが、後出しジャンケンでできることはほとんどありません。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 3冊の著書のほか「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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