【労災保険編】副業について法的に会社と労働者が気をつけるべきことPart2
こちらの記事の続き。
前回も同じことを書きましたが、この記事で言う副業とはいわゆるダブルワーク、本業、副業ともに会社などに雇用される場合をいい、本業、副業のどちらかが個人事業を行う場合は除いています。
で、今日は労災保険についてです。
副業が原因の長時間労働
実は労災保険について、会社が気をつけるべきことというのはあまり多くなく、以下に上げる2つくらい。
1つ目は前回の記事と関連しますが、長時間労働です。
ダブルワークするということは、当然、それだけ労働時間が長くなります。本業先で8時間労働して、副業先で5時間労働という暮らしを月20日行えばそれだけで、残業は月100時間となります。
残業月100時間というのは、労働者がメンタルヘルスになったりや過労死したりすると、それだけで労災事故として扱われるほどの長時間労働です
。長時間労働によるメンタルヘルスや過労死は、損害賠償額は高額になりやすいので場合によっては企業の存続に関わります。
ただし、過労死等の判断材料となる労働時間については、単一の事業場での労働時間のみを見ると解されています。
つまり、単一の事業所での残業月100時間と、本人の意志による副業との合計による月100時間とでは労災保険上の意味は異なるということになります。
ただし、こうした解釈は司法の判断によるものではなく、今後の判例によっては、本業先と副業先とで労働時間を合計した場合も労災認定される可能性はゼロではありません。
よって、労働者に対する最低限の注意喚起等は必要となるでしょう。
特にメンタルヘルスの場合、明確な事故現場があるわけではありません。なので、本業先と副業先、どちらにどれくらい責任があるのかという話でもめることも考えられます。そうなったとき、きちんと注意喚起等されている側がより有利なのは間違いありません。
本業先から副業先へ行くときの事故
もう1つが通勤災害です。
例えば、Aという会社で仕事をした後、Bという飲食店でアルバイトしている、という人がいた場合、自宅からAに行くときに事故があった場合はAの労災を使うことになります。また、Bから自宅に帰る際の事故の場合はBの労災を使うことになります。この2つはまあいいでしょう。
では、AからBに直行する場合はどうかというと、これはBの労災を使うことになります。ある会社からある会社へ直行する場合、というのは基本的に後の方になる会社の労災を使うことになるわけです。BからAに行くときも同様です。
どっちの労災を使うかの何が大事なの? と思った方は次の項目を読んでください。
副業先での事故は補償が少ない
もう1つ、これは会社ではなく労働者側が気をつけないといけないことですが、労災の補償というのは基本的にその労働者の平均賃金(労災では給付基礎日額とか言ったりするが、ほとんど同じ意味)を元に算出します。なので、稼いでる人ほど手厚いわけです。
しかし、この平均賃金の算出時に本業先と副業先の賃金を合算したりはしません。
なので、本業先での収入が30万円、副業先での収入が10万円、のような場合で副業先で労災にあうと、受けられる補償が極端に少なくなってしまいます。比較的軽いけがや病気ならまだいいですが、障害が残ったり、亡くなってしまった場合だと、この先もらえるはずだった障害補償年金や遺族補償年金の額がずっと低いままになってしまいます。
通勤災害の話で、どちらの労災を使うか、という話をしたのはこのためです。
社会保険の保険料の支払いの場合は、例え別々の会社で働いていも合算するのに、労災ではしない、というのは不公平な気もしますがとりあえず法律上はそうなっています。なので、副業に労災事故の危険性の高いものを選ぶ、というのはなるべくならやめておいたほうがいいかもしれません。
以上となります。最後にまとめ
まとめ
- 労災保険では、本業先と副業先とで労働時間は合算しないが、それでもメンタルヘルスや過労死にはくれぐれも注意
- 本業先から副業先へ直行する場合(逆も同様)、直行先の労災保険を使う
- 労災からの補償は、事故のあった会社からのみ。本業と副業で賃金は合算しないので、賃金の低い方で事故に遭うと補償も低くなる
追記:本記事の続きはこちら
追記:本シリーズの続きのリンクを貼りました。
副業について法的に会社と労働者が気をつけるべきこと【労働基準法編】
【雇用保険編】副業について法的に会社と労働者が気をつけるべきことPart3