名古屋で就業規則作成するなら社会保険労務士川嶋事務所

名古屋市営地下鉄名城線、西高蔵駅から北へ徒歩3分、国道19号線沿いの社労士事務所

副業 労働法

副業について法的に会社と労働者が気をつけるべきこと【労働基準法編】

2017/05/24

※ 2017年5月10日追記・修正:労働時間の通算について解説が不十分なところがあったので、追記・修正しました。

 

マイナンバーの導入のせいなのかはわかりませんが、ロートが副業を解禁するなど、最近、副業は労務管理上のちょっとしたHotワードになっています。わたしも以前、こんな記事を書きましたが、

企業はマイナンバー時代の就業規則の副業ルールを見直すべき

いい機会なので、副業について、労働法や社会保険法の関連から詳しく見ていきたいと思います。

ちなみに、今日からしばらくこの話題が続きますが、ここで言う副業とは基本的に、本業と副業どちらも会社などに雇用される場合を想定しています。いわゆるダブルワークです。

なので、本業は会社員だけど副業でせどりやブログやってる、みたいなのは想定していません。そういう人たちにとって気をつけるべきことは基本的に確定申告きちんとしましょう、くらいしかないので。

で、今回は労働基準法編。

 

本業と副業の労働時間は合算する

副業について、労働基準法で気をつけるべきことは何と言っても残業代です。

これについては大昔に記事にしていますが、

ダブルワークの落とし穴

基本的に、労働時間は本業・副業合算します。

労働基準法
第三十八条  労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。

そして、法定の労働時間は1日8時間1週40時間ですが、本業・副業の合算でどちらを超えた場合でも時間外手当が発生します。

つまり、昼8時間本業で働いて、夜に4時間他のところでバイトする場合のこの4時間は通常の1.25倍でないといけないし、週40時間で働いている人が土日にアルバイトする場合、このアルバイトで働く時間分はすべて1.25倍しないといけないわけです。

 

残業代を払うのは本業先?副業先?

では、本業先の会社と副業先の会社で、この時間外手当を支払う必要があるのはどちらなのでしょうか。

これには2つ考え方があります。

一つは、後で働く会社に支払い義務があるというもの。これは行政通達の考え方で、36協定の提出義務なんかも同様。

なので、副業が新聞配達のような朝早くのもので、その後に本業の会社で仕事をする場合、本業での労働時間がきちんと8時間で収まっていたとしても、本業側の会社には時間外手当を支払う必要がでてくるわけです。

(昔の記事で解説しているのはこちらだけですね。社労士なりたてとはいえ勉強が足りない。)

もう一つの考え方は、後で契約した会社に支払い義務があるというもの。

つまり、本業の手取りが少ないから、夜、警備員のバイトで稼ごうとする場合、警備員の契約は本業よりも後になるので、支払い義務は警備員としてその労働者を雇った方ということになります。

こちらはコンメンタールという法律の解説書の考え方ですが、コンメンタールは厚生労働省が監修しているものなので、行政は、行政通達とコンメンタールとで異なった考え方をしているということになります。

 

ある日、副業先(本業先)に時間外手当の請求が!?

では、実務上、こうした取り扱いがきちんとなされているかというと、全くそんなことはありませんし、監督署からその手の是正勧告を食らったという話も聞きません。

理由の1つとしては、会社にしろ労働者にしろ、異なる会社の労働時間が通算されるなんて思ってもいないから、というのが大きい。つまり、お互い知らないから大きなトラブルに発展していないわけです(監督署については実務的に無理なんだと思う)。

お互い知らないまま幸せにいてくれることを願いながらも、労働基準法38条は悪用しようと思えば簡単に悪用できるのもまた事実。

例えば、Aという会社で月曜日から金曜日まで週40時間働いている労働者Xが、土日にBという会社でアルバイトしていたとします。既に述べたように、BはXに通常の賃金の1.25倍の賃金を支払う必要があるわけですが、BはXがAで働いていることは知っていたものの、労働時間を通算しないといけないことを知らず、それがずっと支払われていなかった…。

で、Xが何かのきっかけで(もしかしたらこのブログかもしれない(汗))Bでもらっている賃金には1.25倍分の時間外手当が本来支払われないといけないことを知り、Bに請求の訴えを起こす、ということは、今後副業する人が増えれば増えるほど起こりうると考えられます。

 

思わぬ請求を避ける2つの対処法(?)

そうした事態を避けるには方法が2つあって、1つは制度をきちんと整えて対処する。

もう1つは、菅野労働法でも「使用者が、当該労働者の別使用者の事業場における労働を知らない場合には、労働時間の通算による法違反の故意は不成立となる」とあるの踏まえて、見て見ぬふりする、です。

まさか、労務管理の専門語る社労士のブログで「見て見ぬふりする」と堂々と書くことになるとは、書いてる本人すら思ってませんでしたが、労働時間の通算方法が統一されていないなど、法や解釈に不備があるなかで、労働時間管理なんてどうやんのよ、というのが偽らざるわたしの本音。

ただ、上記の請求をしてくる労働者の場合、「見て見ぬふり」してた会社が、本当は他でも働いていることを知ってたことを主張してくるでしょうから、いかに「上手く」見て見ぬふりするかも重要かもしれません。

追記:異なる事業場で雇われる場合の副業の困難性についてはこちらの記事も。本業先が副業・兼業を許可しても、副業先の会社はその労働者の就労を拒否することができる

 

労働者には職業選択の自由があり、判例を見ても安易な副業の禁止は難しいのは確かです。

しかし、だからといって、絶対「許可」したり「容認」したりしないといけない、というわけでもないので、会社としてどのように扱っていくか判断していく必要があります。

そうした判断の一助となるべく、ここから数日、副業・兼業について解説していきたいと思います。

まとめ

  • 本業と副業の労働時間は通算される
  • 36協定の提出義務・時間外手当の支払い義務は後で働く会社(行政通達)
  • 36協定の提出義務・時間外手当の支払い義務は後で契約した会社(コンメンタール)
  • 今後、副業する人が増えると、時間外手当の請求があるかも
  • ↑を避けるには「制度をきちんと整えて対処する」か「見て見ぬふりする」の2つの対処法(?)がある

 

-shared-img-thumb-GREEN_KE20140125_TP_V

副業するのはいいですが、長時間労働に繋がるのは間違いないので、くれぐれも健康には気をつけて

追記:本記事の続きはこちら

【労災保険編】副業について法的に会社と労働者が気をつけるべきことPart2

 

追記:本シリーズの続きのリンクを貼りました。

【労災保険編】副業について法的に会社と労働者が気をつけるべきことPart2

【雇用保険編】副業について法的に会社と労働者が気をつけるべきことPart3

【社会保険編】副業について法的に会社と労働者が気をつけるべきことPart4

名古屋の社労士が教える社員の副業・ダブルワークに対して会社が決めるべき7つのこと

The following two tabs change content below.
名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。