時事のよもやま話

今年の新入社員は「ドローン型」とかいうこじつけが侮れない理由

2016年3月24日

えーっと、みなさん知ってますか? 今年の新入社員って「ドローン型」らしいですよ?

新入社員は「ドローン型」=操縦ミスに注意―16年度

へーっと、わたしが思ったかどうかはみなさんのご想像にお任せするか、昨日のわたしのツイートを見てもらうとして(笑)、ちょっと気になったので、毎年、この時期に公益財団法人日本生産性本部が発表している、「今年の新入社員の特徴」の過去のものを調べてたみたところ

平成15年度(2003年度) 新入社員のタイプ「カメラ付ケータイ型」
平成16年度(2004年度) 新入社員のタイプ「ネットオークション型」
平成17年度(2005年度) 新入社員のタイプ「発光ダイオード型」
平成18年度(2006年度) 新入社員のタイプ「ブログ型」
平成19年度(2007年度) 新入社員のタイプ「デイトレーダー型」
平成20年度(2008年度) 新入社員のタイプ「カーリング型」
平成21年度(2009年度) 新入社員のタイプ「エコバッグ型」
平成22年度(2010年度) 新入社員のタイプ「ETC型」
平成24年度(2012年度) 新入社員のタイプ「奇跡の一本松型」
平成25年度(2013年度) 新入社員のタイプ「ロボット掃除機型」
平成26年度(2014年度) 新入社員のタイプ「自動ブレーキ型」
平成27年度(2015年度) 新入社員のタイプ「消せるボールペン型」

 

そのときそのときの流行りのものや言葉を乗っけてるだけじゃねえか。

「奇跡の一本松」なんて、もろ前年の東日本大震災の影響が見え見え。他のにしても、その前年やそれよりもっと前に流行ったものが多い。

日本生産性本部のホームページではそれぞれにもっともらしい理由をつけているけど、そもそも入社する前からタイプ、というか傾向なんてわかるのか、1年違いでそんなに型が変わるのか、と疑問はつきません。

はっきり言って、流行りの言葉と新入社員をくっつけて、いろいろとこじつけているようにしか思えないわけです。

 

メディアに取り上げらることに意味がある

しかし、侮れないのは、こんなこじつけでも、ちゃっかりヤフトピになったり、他の大手メディアに取り上げられたりしているということ。

なので、内容やわたしの違和感はともかく、公益財団法人日本生産性本部の広告・宣伝としては大成功しているわけです。

では、どうしてメディアが取り上げるのでしょうか。普通の、例えば、個人のブログで今年の新入社員はドローン型だとか、消えるボールペン型だとか書いても、大手メディアが取り上げることもなければ、リアルやSNSで話題になることはありませんからね。

以下に、日本生産性本部がメディアで取り上げられる理由を上げていきます。

 

今年の新入社員のタイプが話題になる理由

①長い歴史を持つ公益財団法人

ウェブサイトにあるように、日本生産性本部には長い歴史があり、また、もともと公的な機関として始まっている分、メディアが情報ソースとして信頼しやすい。

②社員のタイプ発表の歴史も長い

この日本生産性本部、こうした新入社員のタイプの発表は昭和48年からもう40年以上も続けているそうです。

厳密には昭和48年から平成14年までは現代コミュニケーション・センターが発表を行い、以降は公益財団法人日本生産性本部が発表を行っているそうなのですが、継続は力なりとも言いますが、そういった観点で言うと、くだらなさはさておき、長らく続いていることで企画としての信頼性・安心性などを高めているといえるでしょう。

③有益な情報発信も行っている

新入社員のタイプが役に立たないとは言いませんが(笑)、この日本生産性本部では他にも情報発信を行っています。

特に、実際に会社に入った新入社員に実際にアンケートをとっている意識調査などは、(サンプル数の少なさはさておき)それなりに役に立ちます。

去年の秋の調査では「条件の良い会社があれば、さっさと移るほうが得だ」という設問に対し、「そう思う」とする回答(45.3%)と過去10年で最高、という結果が出ていたりします。

こうして、普段から有益な情報配信を続けることは、情報を得る側からの、これまた信頼を積み重ねているのも同じです。

④なんやかんやでキャッチコピーとして優れている

わたしみたいなひねた人間は、ドローンとか消えるボールペンとか言われると、なに言ってんだこいつ、みたいに思いますが、世の中の多くの人は「今年の新入社員はドローン型」とか言われると、「なにそれ?」と思って食いつくことが多いわけです。

というか、「何言ってんだこいつ」と思う方は思う方で、「何言ってんだこいつ」という言い方で、この話題に関わっているわけですし、なんやかんやで人を引き付けるだけのキャッチコピー力があるといえます。

 

まとめると、メディアに取り上げられるまでは信頼が重要です。メディアで働く人たちって忙しいので、できれば信頼できるソースから情報を得たいと思っています。その方が裏取りの手間が少ないわけですから。

ただ、せっかくメディアに取り上げられても、そこからさらに一般層にリーチするには、一般層にもわかるようなキャッチコピーがないと難しい。特に労務問題って難しい用語が多いので。

 

日本生産性本部に見習うメディア戦略!?

その辺りを狙ってやってるのか、意識せずこうなっていったのかはわからないし、「今年の新入社員は○○型だからこうしよう」という戦略を、企業が取る意味があるかはともかく、日本生産性本部が取っているメディア戦略については大いに参考になる部分があります。

わたしも、①と②はともかく、③と④は割りと意識してブログを書いているのですが、まだまだ足りてないのだろうなあ、と改めて思ってみたり。

それと、商品・サービスについてもちょっとインパクトが足りないというか、「うちの就業規則は消えるボールペン型です」とか言ったらみんな興味を持ってくれるのでしょうかね?

ていうか、「就業規則が消えるボールペン型ってどういうことだ?」て聞かれて、「会社が好きなときに消せる就業規則です」とか言ったら、社労士会や厚労省からまちがいなく怒られるけど(笑)。

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いつものぱくたそさんから「自撮りする新入社員」の画像でお別れです。説明しないと新入社員ってわからないかなあ、と思ったので説明入れてみた(笑)

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 3冊の著書のほか「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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