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まあ、内容としては、今まで労働時間の15分未満が切り捨てられていたことは違法だ、と。なので、過去の未払い分の支払い請求すると同時に、今後は1分単位で労働時間を計算するよう労働協約を結んだというのが顛末のようです。
ブラックバイトについては過去に色々書いているし、
なんともまあ…、と思っていたら、「黒い社労士」として有名な野崎大輔先生もFacebookでこのようにコメントしていました。
世も末だな。1分単位で払う以上トイレの時間、ボケっとしてる時間もなく働けよ!ということになるよ。1分単位で払う以上は職務専念義務を果たしてもらわないと困るよ。勤務時間中は会社の業績を上げることのみ考えて仕事をするべし。トイ...
野崎 大輔さんの投稿 2016年3月15日
本当その通り!
労働基準法って、杓子定規に簡単に法律違反と当てはめられないことがたくさんあるわけですから。
直接の面識はありませんが黒崎先生のこちらの本は読みました。マンガ部分だけパラパラ読んでも面白いですよ。
黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術 (ShoPro Books)
労使協定と労働協約の違い
で、まあ、野崎先生の話は一旦おいておいて、今回の話を聞いて、労働契約ならわかるけど、労働協約って何よ? と思った方も少なくないと思います。
労働協約とは簡単に言うと、会社と労働組合が結ぶ協定のことです。
それって労使協定のことじゃないの? とか、労使協定と何が違うの? と思った方は、人事・労務のお仕事をされたことがある方かもしれませんね。
でも、労使協定と労働協約、実は全く別物です。
まず、結ぶ相手が違います。
労使協定とは、会社と事業場の過半数を組織する組合または過半数代表者とが結ぶものです。一方の労働協約は会社と労働組合が結ぶもので、過半数代表者とは結べない一方、相手が過半数組合である必要はないので、どんなに小規模の労働組合でも、双方が合意すれば労働協約を結ぶことができます。
また、協定や協約がおよぶ範囲も異なります。
労使協定は、過半数組合に所属していない労働者や、過半数代表者を代表者と認めていない労働者にもその効力はおよびますが、労働協約はその協約を結んだ労働組合に所属する労働者にしか効力はおよびません。よって、組合に所属してない労働者には関係がない。
労働協約は就業規則よりも効力が強い
そして何より、結ぶ目的が違います。
労使協定は、基本的に労働基準法などの法律の一部適用を免れるためや、例外規定の適用を受けるために結びます。例えば、36協定なんかは、本来1日8時間1週40時間の法定労働時間の制限を一定の範囲で超えても法律違反にならないように結んでいるわけです。
一方の労働協約は、会社と労働組合が、労働者の労働条件や会社内のルールを規定するために結ぶものになります。つまり、労働契約や就業規則のようなものなのです。
しかも、この労働協約の効力は労働契約や就業規則よりも強いため、例えば、労働協約で何かしらの取り決め、当然労動者により有利な取り決め、があると、その労働協約を結んでいる組合に所属する労働者に対して、それを下回る条件で労働契約を結ぶことはできません。就業規則に定めたとしても、労働協約を結んでいる組合に所属する労働者については労働協約の内容が優先されます。
よって、仮に会社と労働組合で団体交渉をすることになったとしても、簡単に協約を結んだりするのは避けたほうがいいわけです。
実質的には労働協約の範囲外にも影響はおよぶ
でね、くどくどと、労働協約は「労働協約を結んでいる組合に所属する労働者」にしか効果がないことを強調していますが、それなら、労働協約を結んでいる組合の労働者と、それ以外を別々の条件で雇えばいいじゃないか、と思った人もいるかもしれません。
しかし、そのようなことをすると、おそらく、労働者に有利な労働協約を結ぶ労働組合に加入する労働者が増える可能性が高い。労働組合に加入するのも基本的にはタダではないので、そこは労動者個々の判断になると思いますが、それを差し引いても明らかに有利なら、誰だって労働組合に加入するでしょう。
それが企業内組合であればともかく、今回のサンクスの件のように外部のユニオンとなると、これはかなり厄介で、組合活動による業務への影響は避けられません。
だからこそ、今回サンクスは労働協約を結んだブラックバイトユニオンと、それに加入する高校生1人だけでなく、他の労動者についても1分単位で労働時間を計算し、その分の賃金も支払うとしたのだと考えられます。
(ていうか、サンクスって、もうすぐファミマに統合されるはずだけど、ファミマはどうしているのだろうか。昔、ファミマでバイトしてたけど、当時は、こんな知識全く無かったから全然記憶に無い)