面白い論文を読んだので今日は行動経済学の話。
買い物をすると、ポイントカードにポイントが貯まる、というのは今の日本では当たり前、日常的な光景です。
ポイントというのは、お店からすると実質的な値引きです。実際、量販店などで買い物をするときは、値札から付いてくるポイント分を差し引いて、実質的な価格を判断している人も多いでしょう。
一方で、そのポイントカードがいくつもありすぎて、管理が大変という不満や、そうしたポイントカードを嫌う層からは、ポイントを付けずにその分を値引きしてほしい、という意見もあります。
そうした複雑さを解決する手段として、政府はマイナンバーカードを利用してはどうかと、言ったりもしています。
ポイントと値引き、どちらがお得?
では、そもそも、値引きとポイントとではどちらの方がお得なのでしょうか?
合理的な経済人として考えれば、同じ額なら、ポイントよりも値引きの方が価値が高いのは間違いありません。
値引きであれば、値引かれた分の金銭は消費者の手元に残り、いつでもどこでも使えます。一方のポイントの場合は、いつでもどこでも、というわけにはいきません。
では、実際に販売促進により効果があるのはどちらかと言えば、実は、値引きよりもポイント付与という実験結果がでています。
これは何かしらの商品を購入した際に金銭的な損失に対して、値引きがその穴埋めでという性質を持つ一方、ポイントは、そうした損失とは別に得られる利益であると、人間の心(それも、より本能的な部分)が判断することによる錯覚によります。
つまり、値引きの場合は、大きな損失がわずかに小さくなるだけだからあまり価値を感じられないけれど、ポイントの場合だと、その損失とはまったく別ものとして利益を得られると感じられるので、お得さを感じるわけです。
ポイントの方がお得と感じやすいが…
となると、どこのお店も値引きなんてやめてポイントサービスにしたほうが良さそうなのですが、必ずしもそうとも言い切れません。
なぜなら、割引率や購入額が小さい、つまり、値引かれる金額や付くポイントが少ない場合には、値引きよりもポイントの方が有効なのですが、一定よりも割引率が大きくなると、両者に差がなくなったり値引きの方が効果が高くなる場合があるからです。
なので、小売店の立場で考えると、わずかな値引きしかできないのであれば、ポイントの方がいいけれど、大きく値引きできるのであれば値引きでも構わないわけです。
まあ、値引きに比べると、ポイント付与は結構システム的に面倒というのは、小さいお店からすると無視できないかもしれませんが。
こちらの論文では、上記に加え、さらに突っ込んだ実験のことが書かれているので、興味のある方は是非。
ポイントと値引きはどちらが得か?:ポイントに関するメンタル・アカウンティング理論の検証
そういえば、Amazonなんかは元々の商品の値引率がかなり高いことで知られていますが、ポイントの付く商品付かない商品でかなり差がありますが、あれも何らかの戦略、社会実験の一種なのでしょうか、気になります。