残業代の出ない残業のことを一般に「サービス残業」と呼びます。残業代が出ない、つまり、ただ働きをサービスでやる、ということでサービス残業というわけです。
個人的には残業代の出ない残業すべてを一括して「サービス残業」と呼ぶことに違和感があります。
だって、サービス残業というのは、ただ働きという形で「労働者が会社に対してサービスで残業をする」という意味でしょ? でも、喜んでただ働きする労働者なんて、よっぽど自分の仕事が好きな人以外いないと思います。
ということは、サービスといいつつも、実際の労働者の心理は「いやいや」もしくは「仕方なく」。サービス精神でやっているとは、とても言えないわけです。
こちらのデータを見ても、サービス精神でやっているようには思えません。
残業代を請求しない理由「もめごとを避けたい」と、「面倒で手間がかかる」という理由がともに約3割に。請求方法や労働者権利への意識が低いことが判明
残業は会社へのサービスにならない
では、会社にとってはどうでしょうか。
会社の意思として残業させて残業代を支払わないという場合、「サービスを強制している」という意味になります。ただ、会社が残業させて残業代を支払わない、というのはそもそも賃金未払いで労働基準法違反。法違反にサービスも何もありません。
そうではなく、会社として残業をさせるつもりがない、労働者の方から残業をしたい、それこそ本当にサービスとしてやりたいという場合はどうでしょうか。
労働時間というのは、いくら働いても基本的に会社の指揮命令下にない限り認められません。つまり、業務命令のない残業というのは、労働時間でも残業時間でもないわけです。
よって、いくら残業しても、会社の指揮命令のない残業に残業代を支払う必要はないわけですが、会社としては勝手に残業されて健康を害されても困るし、残業を減らしていこうと頑張っている会社にしてみると、組織の和を乱す人がいるととても困ります。また、下手に放置していると、労働者が「実際には黙示の指揮命令があった」と言って、後々、未払い賃金として訴えてくる可能性もゼロではありません。
残業は迷惑
このように、サービス残業というのはサービスという言葉のイメージに反して、悪意のある会社を除く、ほとんどの労働者と会社にとって、サービスとなっていないわけです。
むしろ、迷惑。
サービス残業させられる労働者にとっても迷惑なら、勝手にサービス残業させられる会社にとっても迷惑。
よって、わたしの提案は、今後、残業代の出ない残業のことは、サービス残業なんて呼ばずに迷惑残業と呼ぼう、というもの。
単純ですが、「迷惑」という言葉には労働者の方からみても、会社の方からもみても、残業を正当化させない、いや~な響きがあって非常にいいと思うんですがどうでしょうか?
呼び方を変えるだけで残業が抑制できるのなら苦労ないと思う人は、行動経済学におけるフレーミングについて勉強してみてください。人間というのは案外単純なものなのです。
というわけで、わたしは今後、孤独に1人で「サービス残業」のことを「迷惑残業」と呼んでいきたいと思っています。
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