社会保険の加入手続きには、未成年でまだ基礎年金番号が発行されていない場合は別ですが、基礎年金番号が必要となります。
ただ、どうしても基礎年金番号がわからない場合は、番号なしでも以前は社会保険の加入ができていたのですが、今年になって同じような感覚で手続きをしたら、社会保険の加入に年金番号が必須であると、年金事務所に言われてしまいました。
(健康保険の保険証を発行するのはけんぽ協会ですが、社会保険の加入手続きは年金機構が行います。)
どうしてかな、と思っていたんですが、これがその理由だったんですね…。
年金番号を不正入手、健康保険証詐取…2人逮捕(読売新聞)
誰から年金番号を不正入手したのか
この事件、現在も全容解明中とのことですが、上記の記事を流して読むだけでも、疑問点は複数わいてきますが、まずは記事タイトルについてのつっこみ。
「年金番号を不正入手」とありますが、今回の件は、一般の他の誰かの年金番号をどこからか盗んできたわけではありません。
年金番号記載なしで社会保険の加入手続きを行うと、新しい年金番号入手できる、という現在の制度の穴を突いて不正に入手しているだけです。
どうして、このような取り扱いをしているかというと、未成年者や外国人などのように、もともと年金番号を持っていない人がいるからです。
なので、「年金番号を不正入手」というのは誤解の元。「保険証を不正入手」で良かったんじゃないの? と思います。悪用したのも保険証の方だったんだし。
保険証を入手するための大前提
次に、事件自体の疑問に移ると、まず、前提として、けんぽ協会(全国健康保険協会)の保険証を手に入れるには、その労働者が属する会社もしくは個人事業主が社会保険に加入している必要があります。また、手続き自体も通常は会社が行います。
よって、今回逮捕された韓国籍の男ら2人が、架空の人物として保険証を手に入れるには、
- どこかの会社に架空の人物として入社して加入
- 自分たちで会社を作った上(個人事業でも可)で社会保険に加入する
どちらかの方法を取る必要があるわけです。
今回の報道だけでは、2人がどちらの手段を取ったかはわかりませんが、普通に考えれば2だとは思います。というのも、きちんとしている会社であれば、入社予定の労働者の身元を事前に確認するはずだからです。
なので、1だとすると、身元確認をきちんとしていないことになるので、会社の責任が問われかねません。今回の件で、会社の経営者および人事・労務担当者の方が教訓にすべき点でしょう。
年金機構は本人確認していなかったと、記事にありますが、会社が当然に行っている、という前提で行っていないわけですから、もし、今回の件でその前提が崩れるとなると、社会保険の加入手続きに身分証等が必要になる可能性も出てきます。
マイナンバーがあれば防げた話
で、今回の件なのですが、基礎年金番号ではなくマイナンバーであれば簡単に防げた、というのがわたしの結論です。
(ただし、現在は、去年の情報流出の件により、年金機構はマイナンバー制度への加入が延期されています)
マイナンバーは生涯一番号であり、今回のように行政から1人に複数交付されることはありません。マイナンバーをなくしたり、忘れたりした場合など、悪用の可能性がある場合は変更が認められますが、キャッシュカードやクレジットカードの番号と同じで、変更すると過去の番号は使えなくなります。
また、番号そのものにもチェックディジット(検査用数字)が入っているので、適当に12桁の番号を書いてもプログラムで弾かれバレます。
加えて、マイナンバーによる行政機関同士の情報交換により、地方自治体から住民票情報を入手すればなりすまし、架空の人間からの申請対策は完璧なのですが、残念ながら、社会保険の加入手続きにおいて、マイナンバーで行政機関同士が情報提供を行うことは、マイナンバー法で許されていません。
ただ、生涯一番号とチェックッディジットだけでも、十分、不正に保険証を入手することは防げると思います。