問題社員・炎上

炎上「元」社労士に下された社労士会の処分の詳細や、社労士法の懲戒との違いについて

2016年1月4日

炎上

年末年始はこのウェブサイトもアクセス激減、いつも以上に低空飛行だったのですが、12月30日、例の炎上社労士への愛知県社会保険労務士会による処分が発表された日だけは検索エンジン経由でいつも以上のアクセスがありました。

書き込み「社員うつにさせる方法」会員権停止に

ただ、検索エンジンでたどり着くであろう以前の記事では、今回下されたこの社労士会による処分について全く触れていません。別にわざと触れなかったわけではなく、単に私が勉強不足で社労士会の会則に詳しくなく、そういう処分があることに気づかなかったのです。なんというか、申し訳ないです。

 

愛知県社会保険労務士会が出した処分のおさらい

で、改めて今回の処分についてまとめておくと、例の社労士に対して愛知県社会保険労務士会は

  • 3年間の会員権停止
  • 退会勧告

という処分を下しました。

今回下された処分というのはあくまで「社労士会の処分」であり社労士法に定められている「懲戒」ではありませんが、これはきわめて重い処分といえます。

なぜなら、社会保険労務士などの士業というのは資格を持っているだけではその資格を名乗って業務を行うことはできず、各士業の統括団体(全国社会保険労務士連合会や日本弁護士連合会など)が備える名簿に登録しないといけません。

そして、この名簿登録は、各都道府県などに置かれている社労士会や税理士会、弁護士会などへ入会が条件とされています。つまり、どこかの都道府県の社労士会の会員でないと、いくら資格試験に合格しても社労士として業務を行うことはできないわけです。

その会員としての資格が停止されれば、社労士登録もできないし、社労士登録できないと言うことは社労士として仕事ができません。

いずれにせよ、処分日が12月28日だとすると、例の炎上社労士を社労士と呼ぶのはもう正しくないわけです。

 

他の資格にも影響を及ぼす社労士法の懲戒処分

これだけ重い処分なのだから社労士法の懲戒処分は不要なのでは、と思う方もいるかもしれません。

というか、わたしも、ぶっちゃけ今回メディアに大々的に処分内容が発表され、騒動が落ち着きそうな気配を見せているなか、懲戒処分でこれが最後とばかりにわざわざ油を入れる必要もないだろう、と思っています。

ただ、実際に必要かどうかはさておき、社労士法の懲戒と社労士会の会則による処分とではその法的な意味は大きく異なるのもたしか。

社労士法に定めのある懲戒は以下の3つです。

第二十五条  社会保険労務士に対する懲戒処分は、次の三種とする。
一  戒告
二  一年以内の開業社会保険労務士若しくは開業社会保険労務士の使用人である社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員若しくは使用人である社会保険労務士の業務の停止
三  失格処分(社会保険労務士の資格を失わせる処分をいう。以下同じ。)

三が最も重く、社労士法で懲戒として失格処分を受けると社労士資格を失うことになります。

実はこの三はこれにとどまりません。なぜなら、税理士法や行政書士法のように社労士法で失格処分を受けたものについて処分日から3年間は登録について欠格事由とする、としている士業の法律は少なくないからです。

平たく言えば、社労士法で失格処分を受けると、処分日から3年間は他の士業への登録が不可能となるわけです。

失格まではいかなくても、二のように社労士法により業務停止されれば、当然、その期間はどのような形であれ社労士として登録することはできません。

 

あくまで愛知県社会保険労務士会内にとどまる今回の処分

しかし、今回の件はあくまで愛知県社会保険労務士会の処分なので、その効果は愛知県社会保険労務士会内に限定されます。

なので、例の元社労士は複数の資格を持っていたようですが、現状ではそちらの会員資格や登録まで停止されるということはありません。

また、愛知県がダメならと、他の都道府県の社労士会へ入会する、ということも、愛知や東京の社労士会の会則を見た限り(岐阜と三重はネットに会則がなかった)、「他の社労士会で処分を受けたものは入会を拒否する」といった、条文が入ってないところ見ると不可能ではないでしょう。

もちろん、不可能ではないというのはイコールで「できる」わけではなく、契約自由の原則から言えば、会則に定めがなくても、こうして問題を起こした人間の入会を拒否することはできるとは思いますが。

 

倫理研修のとばっちり

そもそも例の元社労士も「処分が出た場合、粛々と従う」と言っていたそうなので、この問題がこれ以上こじれることはない、と思うので、わたしもこの件について触れるのはこれで最後にしておこう、と思って愛知県社会保険労務士会のサイトを見たら、愛知会の会長の緊急声明に

愛知県社会保険労務士会では急遽1月27日、28日において臨時の「倫理研修」を開催することにしました。

参照:社会保険労務士の職業倫理に関する緊急声明

とのお言葉が!

倫理研修というのは5年に一度社労士全員が必ず受けないといけないもので、わたしは一昨年に受けたばかり・・・。

処分を2015年内に下してくれたことは評価するけど、これはかなり面倒くさい。ていうか、絶対眠くなるやつなので、正直勘弁してほしい・・・。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 3冊の著書のほか「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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