労務管理と行動経済学

行動経済学で考える、人が不正を行いやすくなるきっかけ7選

えー、先にネタばらししてしまいますが、今回の記事はリニューアル前の事務所ウェブサイトにあったコンテンツを再構成したものです。どうしても、ブログを書く時間が取れずで、ご勘弁ください。

明日以降も、しばらくそうしたコンテンツが続きます。

まあ、リニューアル前の事務所サイトなんて、雀の涙も乾くくらいアクセスがなかったので、殆どの人は新鮮な気持ちで読むことができると思います(笑)。

 

人は(ときどき)ズルをしたくなる生き物である

一般的で善良な普通の市民は基本的に「自分は正直な人間である」と思いたがっています

しかし、不正を行ってもばれないであろう場面では「ズルをしてでも利益を得たい」という気持ちが生まれます。

この「ズルをしてでも利益を得たい」という気持ちと「自分を正直な人間である」という気持ちがぶつかり合ってせめぎあい、「ズルをしてでも利益を得たい」という気持ちが勝ったとき、人は不正を行うのです。

わたしたちは、不正やズルというのは、ある特定のそういった素養のある人間のみが行うものであると考えがちですが、実際には必ずしもそうではないわけです。

一般の普通の善良な人々であるみなさんにも心当たりはあるのではないのでしょうか。

宿泊先で、アメニティグッズを大量に、あるいはアメニティグッズでないものまで拝借してしまった経験。あるいは、保険会社に実際よりも過大に被害を報告し、保険金をちょっとだけ多くもらった経験などなど。

一般の普通の善良な人々の多くは、自分を正直な人間と思いたがっています。その一方で上にあげたような小さなズル、あるいは小さな不正を行ったりしています。

では、どんなときに人は不正を行うのかといえば、以下の7つがその代表的なパターン。

 

人が不正を行いやすくなるきっかけ7選

① お金から距離があるとき

→ 人は100円玉を盗むより、100円のボールペンを盗むほうが抵抗がありません。それは、帳簿上などの様に、お金だけど直接お金を触らない場合も同様です。(つまり、会社が一番に気をつけないといけないのは神棚の上に置き忘れた1万円札のことではなく会社の備品の盗難や、タイムカードの改ざんということです)

② 消耗しているとき

→ 人は疲れているとき、正常な判断ができなくなるばかりか、不正に対する抵抗もなくなってしまいます(残業が多くなると、人件費の高騰だけでなく、社員の不正のリスクもアップ)

③ まわりの影響

→ まわりに不正やズルを行っている人間がいると、人は不正しやすくなります。(1人の問題社員の行動がまわりにも影響してしまうのです)

④ 人との協働

→ 「赤信号みんなで渡れば怖くない」ではありませんが、人と協力して何かをやるとき、不正への抵抗がなくなってしまうことがあります。(つまり、問題社員に協力者いた場合?)

⑤ 「他人のため」に不正

→ 自分の行為が他人の利益になる場合、それも必ずしも直接的に自分の利益にならなくても不正を行ってしまうことがあります。(上司の顔を潰さないための不正、部下や同僚をかばうための不正・・・)

⑥ 不正が不正を呼ぶ

→ 一度不正を行った者は、その不正を正当化し、また不正を行う。(社員の問題行動は小さいうちにその目を摘んでおくことが重要ということです)

⑦ 当人の創造性が高い場合

→ 創造性の高い人間はときに、自分の不正を正当化するために、その創造性によって言い訳を作ることが上手だったりするのです。(さも創造性が万能の才能であるかのように言われますが、必ずしもそうではないわけです)

 

以上です。

一般の普通の善良な経営者の方も労働者の方も、上記のような状況に足を踏み入れないよう気をつけましょう。

今回の記事の参考にさせていただいたのは行動経済学者ダン・アリエリー氏のこちらの著書。

ずる―嘘とごまかしの行動経済学
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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 3冊の著書のほか「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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