A8 有給の取得を拒否することはできませんが、他の時季に変更することはできます
会社に認められている時季変更権
労働者がいつ有給を取るかを決定できる権利は、時季指定権として労働基準法で認められています。
その一方で、会社には時季変更権、つまり、労働者が有給を取得したいとする日の時季を変更する権利が認められています。
ただし、労働者の時季指定権が一般に広く認められる一方で、会社の時季変更権の行使には一定の制限がかけれられており、会社の時季変更権が認められるのは労働者が有給を取ることによって「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られています。
「事業の正常な運営を妨げる」とは
ここでいう「事業の正常な運営を妨げる」とは、業務の規模や内容、作業の内容、代替要員の手配の難易度等を総合的に判断する必要があります。
例えば、すでに多くの人が有給を取得している日に有給を取得していたり、風邪などで会社に多くの欠員が出ていたりして、さらに代替要員も見つからない場合、そこでさらに有給を取得されると「事業の正常な運営」に支障が出るので時季変更権は認められます。
また、有給の日にその人でないとできないような業務がある場合も、判例では時季変更権は認めています。
一方で、慢性的な人不足に関しては、時季変更権を行使する理由として認められていません。
いずれにせよ、時季変更権が行使可能かどうかの判断する際は、会社の主観的な判断ではなく、より客観的な判断に基づいて、業務上の支障があるかを判断する必要があります。