労災保険制度 副業・兼業

【令和4年最新版】副業で法的に会社と労働者が気をつけるべきこと【労災保険法編】

2022年1月28日

過去記事の「副業について法的に会社と労働者が気をつけるべきこと」というシリーズに関して、古くなった内容の刷新、現行法にあった内容にブラッシュアップするためのシリーズ。

今回は労災保険編です。

なお、本シリーズで言う副業・兼業とは原則、個人・フリーランスで副業・兼業をする場合は含めず、複数の会社で雇用されて働くダブルワーク形式のものをさすので、あらかじめご了承ください。

 

働き方改革前後で最も改善された制度

過去の労災保険法は副業・兼業している労働者の保護を想定していませんでした。

まず、AとBの2つの事業場で働く労働者がAで労災にあった場合、Aの賃金だけを基に労災の給付額が決定されていました。

なので、1つの事業場で働く人と、複数の事業場で働く人の収入の合計が同じだったとしても、労災の給付の面では後者の方が不利となっていました。

また、労災にはAとBの事業場、両方に原因があるような労災があります。

例えば、長時間労働を理由とするメンタルヘルス等の労災ですが、こうした労災は労災認定されるかどうかの負荷の基準が定められています。

しかし、法改正前は、その基準を個別の事業場に当てはめることでしか判断していませんでした。つまり、個別の事業場での負荷では労災認定の基準に達しないものの、複数の事業場の負荷を合計したら労災認定基準を満たすという場合も、労災認定されない可能性があったわけです。

こうした問題を解決するために施行されたのが、令和2年9月施行の改正労災保険法です。

 

複数の事業場の賃金を合算して給付額を計算

まず、複数の事業場で働く労働者(複数事業労働者)の給付額の問題については、本業先と副業先の収入を合わせて給付額を決定するという改正が行われました。

例えば、法改正前は、本業先の会社で20万円、副業先の15万円の賃金を得ているものが副業先の会社で労災に遭った場合、副業先で得ている15万円の賃金を基に各種給付の額が決定されていました。

しかし、法改正後は本業先で労災に遭おうと、副業先で労災に遭おうと、本業先の賃金と副業先の賃金を合わせた35万円の賃金を基に、労災の給付額が決定されるようになったのです。

出典:複数事業労働者への労災保険給付 わかりやすい解説(リンク先:PDF 厚生労働省)

 

 

複数の事業場の負荷を総合的に評価(複数業務要因災害)

また、複数の事業場の負荷が原因で起こる労災についても、法改正が行われました。

具体的には、個別の事業場の負荷が基準を満たすかどうかだけでなく、個別の事業場の負荷だけでは基準を満たさない場合、複数の事業場の負荷を合計した場合にその基準を満たすかどうかを判断するとされたのです。

例えば、一月にA事業場で40時間、B事業場で60時間の残業をする複数事業労働者が過労死してしまったとします。

一般に過労死ラインと呼ばれる残業時間は「発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間」ですが、この過労死ラインを超えているかどうかについて、まずはA事業場、B事業場、個々の残業時間をみて判断するのはこれまで通り。

法改正前は、ここで判断は終了していましたが、法改正後は合算した残業時間についても判断材料都市、労災に当たるかどうかを判断するようになっています。

出典:複数事業労働者への労災保険給付 わかりやすい解説(リンク先:PDF 厚生労働省)

 

特別加入する一人親方も対象

上記の賃金の合算、負荷の総合評価は何もダブルワーク型副業に限った話ではありません。

1つの会社と労働契約関係にあり、他の就業について特別加入している場合、複数の特別加入をしている場合も対象となります。

例えば、会社で雇用されているけれども、他でフリーランスで働いていて労災の特別加入をしているという場合に労災にあった場合、賃金の合算、負荷の総合評価が行われるということです。

一人親方の特別加入については、一昔前までは建設業くらいしかありませんでしたが、最近では芸能人やアニメーター、ITフリーランスなど業種が拡大されているため、こうした恩恵にあずかれる人は多くなっているのではと思います。

 

労災保険は副業・兼業の障壁ではなくなった

かつての労災保険制度は複数就労を想定しておらず、副業・兼業の大きな障壁となっていました。

しかし、令和2年の改正で状況は大きく変わり、労災制度が副業・兼業の障壁となることはまずなくなったといっていいでしょう。

ちなみに、令和2年の労災保険法の改正内容をもっと詳しく知りたい、という方は、過去記事で詳しく解説しているのでそちらもどうぞ。

では、労災保険以外の保険、雇用保険や社会保険は現在どうなっているか、についてはまた次回以降に解説したいと思います。

今日のあとがき

前回の労働基準法編を書いてから随分時間が経ってしまいましたね。

年明けから忙しかったのもあってですが、おかげで筋トレもあまりできず、去年の4月からゆっくりと確実に減らしてきた体重もやや増加気味。

なので、ブログも体重も来月以降はなんと持ち直したいところ。

ちなみに、こちら、最近ドハマりしてるプロテイン系スナック。

歯ごたえのある堅さのせいか、プロテイン系スナックによくある粉っぽさも気にならないし、もともとえんどう豆系のスナック大好きな私にはドストライク。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 3冊の著書のほか「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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