過去にも「副業について法的に会社と労働者が気をつけるべきこと」というシリーズの記事を書いたのですが、働き方改革を経て、法改正を経て、というところでさすがに内容が古くなってしまっていました。
なので、今回、改めて「副業について法的に会社と労働者が気をつけるべきこと」というシリーズをまとめていきたいと思います。
まずは前回のシリーズではなかった「基礎知識編」から。
この記事の目次
副業の形態
まず、非常に大事なこととして、会社で働くことを本業として持ってる人が副業・兼業する場合の副業・兼業には、大きく分けて2種類あります。
個人・フリーランス型とダブルワーク型
一つは個人・フリーランス型。
つまり、正社員として雇用されて働く傍ら、自分で事業を興したり、フリーランスとして働く副業です。
最近ではUber EATSの普及により、正社員として働きつつ、休日に空いた時間は配達員として働く、という人も増えていますが、あれなんかは配達員が個人事業主としてUber EATSと契約を結ぶので、個人・フリーランス型の副業となります。
もう一つはダブルワーク型で、複数の会社に雇用されて働く働き方です。
学生がアルバイトを掛け持ちするのなんかはこちらに当てはまります。
他の会社で役員になる場合
この2つに当てはめにくいものとして、会社の正社員として雇用されつつ、他の会社で役員になっている場合があります。
この場合、役員としての立場が会社法上の役員などのように労働者としての性質がないのであればフリーランス型、執行役員のように労働者扱いの部分がある場合はダブルワーク型と考える必要があります。
副業の形態で適用される法律が変わる
なぜ、会社員の副業において、個人・フリーランス型かダブルワーク型かが大事なのでしょうか。
それは、個人・フリーランス型かダブルワーク型かで、適用される法律が変わってくるからです。
具体的にいうと、ダブルワーク型の場合、本業・副業、どちらでも労働者として働くことになるので、労働者に関わる労働基準法や社会保険関連の法律の適用を本業・副業どちらの会社でも受けることになります。
一方、個人・フリーランス型については、あくまで個人での業務となるため、そうした法律の適用はありません。
つまり、会社からすると、副業・兼業を容認することで、守らなければならない法律が増えるわけです。
このダブルワーク型副業と労働基準法や社会保険関連の法律等の関係については次回以降で詳しく見ていきます。
副業・兼業は禁止できるか
副業・兼業は労働者のプライベートな時間に行われるもの
さて、働き方改革では副業・兼業の解禁が謳われてきましたが、今現在も副業・兼業を許可制にしていたり、あるいは一律禁止としているところは少なくないでしょう。
では、会社が労働者の副業・兼業を禁止することは問題ないのでしょうか。
副業・兼業は通常、労働者のプライベートの時間に行われるものです。そして、基本的に会社は労働者のプライベートに関与することはできません。
つまり、この時点で副業・兼業を会社が禁止する、というのには無理があるわけです。しかも、労働者には職業選択の自由があります。
こうしたことから、会社が労働者の副業・兼業を一律に禁止することは非常に問題があると言えます。
副業・兼業を制限できる場合
とはいえ、会社はどのような副業・兼業であってもそれを認めないといけないわけではありません。
以下のように、副業・兼業をすることで労務提供に支障がある場合や、副業・兼業先が競業に当たる場合など、副業・兼業をすることが会社に不利益となる場合については制限することも可能です。
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ただし、こうした形で副業・兼業に制限を設けるには、あらかじめ労働契約にて制限を設けるか、就業規則にてその定めを行っておく必要があります。
また、上記に当てはまることを理由に懲戒処分をしたとしても、労働者が懲戒処分は不当であると司法に訴えたときに、その正当性が認められるかは、実際の副業の実態やその禁止内容の合理性、懲戒処分の重さが適当であるかなどによって変わってきます。
まとめ
今回は、副業・兼業の基本的なことを解説するため、「副業には個人・フリーランス型とダブルワーク型がある」「副業・兼業を一律に禁止することはできないが、会社に不利益がある場合は制限することができる」といったところを解説しました。
これらの基礎知識を元に、次回以降は労働者に関わる個別の法律の内容と副業・兼業について見ていきます。