社労士試験

国家試験の恥だから社労士試験の合格率をいじるのはもうやめろ

2015年11月11日

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えーっと、まずわたしは他の社労士の先生のように、今年の社労士試験の結果を受けて「今年は難しかったんですね」とか「それだけ難しい試験を通ったんだから今年の合格者は優秀ですよ」みたいなありきたりで、当り障りのない事を言うつもりはありません。というか、なんでそんなこと言わないといけないのかもわからない。

だってね、

誰がどう考えたって平成27年度の社労士試験合格率2.6%は低すぎるでしょう。

社労士試験の合格率というのはだいたい7~9%が普通で、低い時でも5%台。それがいきなり2.6%って、わたしははっきり言って、この結果を出した厚生労働省の役人の頭はおかしいんじゃないかとさえ思ってますよ。少なくともどうしてこうなったのか説明義務はある。

別にね、社労士試験に厳格な合格基準があって今年、たまたま今年の受験者のレベルが低くてこういう結果になったというならしょうがない。

けれど、社労士試験というのは最後の最後に明らかに何らかの恣意が入った人の手が入る。でなければ、合格率が毎年毎年一定のパーセンテージに落ち着くわけがない。

どうして試験結果に人の手が入れられるのかなど、社労士試験がいかにおかしな試験かなどは過去に記事にしているので以下のリンク先をどうぞ。試験の概要なんかもこちらで説明してますので、社労士試験のことをよく知らない方は先にこちらを読んだ方がいいかと思います。

 

社労士試験の鬼門は選択式

社労士試験で問題になるのが兎にも角にも選択式の救済です。

選択式問題とは法律の条文の一部を虫食いにして、そこに当てはまる正しい語句を、複数の選択肢から選択するというものです。

ちなみにこちらが平成27年度の選択式問題(リンク先PDF)

この選択式、労働基準法のようにメジャーなところから文章を引っ張ってきてくれればそんなに難しくないのですが、厚生労働白書のような、社労士試験の参考書や問題集にも載ってない、ほとんどの受験者にとって馴染みのない文書を引っ張ってこられると、とたんに難易度が跳ね上がります。結果、選択式のボーダーである3点を下回る人が多くなる。

しかも、教科ごとに選ばれる虫食い元となる文章は大抵は1つ、多くて2つなので、試験勉強中に見たこともないような文章が現れる(えてして現れるのが社労士試験)ともう後は運に任せるほかなくなります。つまり、問題の元となる文章に何が選ばれるかが選択式の全てなわけです。

で、さすがにそうした難問というよりは悪問でボーダーを超えられないのは可哀想、仕方ないということで、社労士試験では問題の難易度等に応じて2点救済や1点救済を行っているのですが、どうにもこれが胡散臭い。試験を運営している人間がこの救済によって恣意的に合格者数や合格率を決めているんじゃないか、との疑念が生まれるわけです。

 

情報公開制度で分析された社労士試験の合格基準

上にリンクを張ったわたしの過去記事では、特に何の根拠もなく厚労省の役人が恣意的に救済基準を変えてるとか書いていましたが、なんとこちらのブログでは、厚労省に社労士試験の資料の開示請求を行った上で、社労士試験の合格基準や救済基準について分析したものがありました。勇者です。

社労士試験の「合格基準の考え方」(最終章)(社労士試験 合格基準について(記録))

なんか文字色をいろいろ変えすぎてて目がチカチカして見辛い、ということを差し引いてもすごいですよ、この分析は。

詳細はリンク先を見てもらいたいのですが、とりあえず選択式の救済にはきちんと基準があり、科目で3点以上を取った受験者が5割未満の場合に救済が行われるようです。つまり、平均点よりも得点分布のほうが救済には重要となるわけです。0点を取るような不勉強者が増えると当然救済が発動する可能性は高まります。

ただ、こうした原則的な基準では説明のつかない救済も過去の試験では行われており、こうした例外的な救済は明らかに合格率の調整に使われていようです。個人的には合格率の調整を行うこと自体どうかと思いますが、百歩譲ってそれをよしにするとしても、どうも合格率の調整とはあまり関係のないところでも救済が行われていたりするらしく、それは社労士試験の公平さを歪める行為だろうとわたしは思います。

 

今年の合格率はやっぱりおかしい

で、今年の社労士試験の合格率に話は戻るのですが、さきほどのブログの管理人さん(TKTK0009さん)も、この結果はおかしいと早速記事にしており、すでに情報公開請求も行っている模様。

平成27年度社労士試験 合格基準の開示請求(社労士試験 合格基準について(記録))

コメント欄では行政訴訟の話まででている。

仮に原則的な基準通りにやってあの結果だとしても、これまでは合格率を7~9%に近づけるために、例外的な救済を行っていた。にもかかわらず今年は行わないのはなぜなのか、というのが今回の請求目的のようです。確かにあまりにも過去の合格基準とかけ離れてますからね。わたしも社労士であると同時に一度はこの救済制度にやられた人間、陰ながら応援しますので徹底的にやってほしいです。

TKTK0009さんの推察通りなら、この合格率の決定には連合会(全国社会保険労務士会連合会)も1枚噛んでるようですし。

 

あっ、そうだ、最後に一言だけ、これだけは言わせてください。

「社労士試験のことは嫌いになっても社労士のことは嫌いにならないでください」

 

追記:批判することに一所懸命で非常に大切なことを書き忘れていました。平成27年度の社会保険労務士試験に合格した皆様本当におめでとうございます!

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 3冊の著書のほか「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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