全3回でお送りした選択的週休3日制について詳しく解説シリーズのラストです。
最後となる今回は、選択的週休3日制と他の制度との関連についてみておきたいと思います。
この記事の目次
他の制度との兼ね合い
(1)会社独自の特別休暇等の制度
選択的週休3日制は目的ではなく手段
さて、こういう新しい制度が出てくると、我先に、と導入したがる企業があります。
しかし、忘れてはいけないのは、選択的週休3日制はそれを導入すること自体が目的ではありません。
これは他のテレワークや副業・兼業などの制度も同じです。
選択的週休3日制は主にワークライフバランスの向上や業務の効率化のために導入するものですが、しかし、ワークライフバランスの工場や業務の効率化は選択的週休3日制のみによって達成できるものではなく、他の数ある手段の一つにすぎません。
明確な目的があるなら他の制度を導入するのも手
こうしたことから、会社として明確な、あるいは特定の目的がある場合、選択的週休3日制ではなく、目的別に会社独自の制度を導入するという方法も考えられます。
例えば、従業員の育児や介護を支援したいのであれば、選択的週休3日制以外にも、会社独自の育児休業や介護休業の導入、あるいはテレワークの推進といった方法がありますし、リカレント教育による学び直しを支援したいのであれば、その学費の一部を会社が補助するといったことも考えられます。
また、前回の記事でも述べたとおり、選択的週休3日制に関しては目的に応じて利用を制限することも可能ですが、選択的週休3日制が他の制度と最も異なる点は従業員が自由に使える休みが1日増えることです。
なので、利用目的を制限することは、本制度の特徴や魅力を大きく削ぐものといえます。こうした点からも、選択的週休3日制を導入する際に、目的を制限し、特定の場合にしか利用できない制度にするのであれば、そもそも選択的週休3日制ではなく、会社の目的に合った専用の制度を導入することも合わせて検討した方が良いでしょう。
(2)副業・兼業
副業・兼業と相性の良い選択的週休3日制
従業員側からみて副業・兼業に関して問題となるのは、会社がそれを許可しないことのほかに、解禁されたとしても、時間の制約から、物理的に副業・兼業ができないということがあります。
そのため、従業員が自由に使える休みが1日増える選択的週休3日制と副業・兼業は非常に相性の良い制度といえます。
選択的週休3日制を導入するなら副業・兼業を禁止するのは難しい
その一方で、副業・兼業を行う場合、労働時間の合算や競業、独立といった問題が発生するため、選択的週休3日制導入をメリットではなくデメリットと考える会社も多いと思われます。
とはいえ、会社は、従業員の職業選択の自由などの観点から、副業・兼業を完全に禁止することはできません。
同様に、選択的週休3日制についても、副業・兼業を目的として従業員が週休3日を選択することに対して、競業や企業秘密の漏洩等を理由とする従来の副業・兼業の制限以上の制限を設けるのは難しいと考えられます。
以上のことから、選択的週休3日制を設ける場合、副業・兼業との相性の良さから、会社の望む望まないに関わらず、副業・兼業を目的に週休3日を選択する従業員が現れる可能性は高いと考えられます。
逆にいうと、副業・兼業をあまり推奨したくないという場合、選択的週休3日制を導入しない方が無難といえます。
データで見る従業員側の需要
前回の記事でも述べましたが、選択的週休3日制の制度設計においては、賃金と労働時間をどのようにするかが非常に重要となります。
そして、選択的週休3日制における賃金と労働時間に関して、以下の3つに分類できます。
② 賃金維持・労働時間減少型
③ 賃金・労働時間維持型
で、この選択的週休3日制における賃金と労働時間について、従業員側がどう考えているかがわかる調査結果が最近公表されました。
会社員94%が「週休3日に魅力を感じる」と回答、どんなことを期待する?
こちらは静岡の「週休3日」というコンサルティング会社(ややこしい)の調査ですが、「あなたが最も魅力的に感じる働き方をお答えください」という質問に対し、1位が「週休3日正社員で給与そのまま(10時間×4日)」が40.9%(上で言う③)、「週休3日正社員で給与は8割(8時間×4日)」が28.7%(上で言う①)となっています。
ちなみに、3位は「週休2日正社員で給与そのまま(8時間×5日)」なので、給与が減ったり、1日当たりの労働時間が増えたとしても週休3日がいいという人が多いようです。
また、今回の調査の選択肢には②の賃金維持・労働時間減少型がなかったようですが、これがあったらおそらく他をぶっちぎっていた可能性は高いでしょうね。
まとめ
全3回を通して言えるのは、選択的週休3日制を導入することは別に義務でも何でもないということと、その一方で、労働者からの需要はかなりあるということです。
この構図、どっかで見たことあるなあと思ったら、コロナ前のテレワークですね。
よって、どこまでいっても、導入するかどうかは会社側の判断ということになりますが、導入しようと少しでもお考えの場合は、今回の全3回のシリーズや、導入にあたっては特に前回の記事をご確認いただけると参考になるのではと思います。