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Facebook IT 時事問題

今後は新入社員のSNSアカウントの有無を確認せざるをえないかもしれない話

2016/02/09

先日、とあるTwitterアカウントが、Facebookに上げられた「はすみとしこ」という人の難民を揶揄するイラストに「いいね」をした400人余りの個人情報をGoogleスプレッドシート(Google版エクセルみたいなもの)にリストにまとめてネット上で公開する、という事件があり、現在進行形で炎上しております。

事件を起こしたTwitterアカウントというのは、反レイシズムを掲げる「しばき隊」という市民団体の1人のもので、これだけだったら、まあ、頭のおかしい市民団体の頭のおかしい行動で終わったかもしれないのですが、このアカウントの持ち主の正体がF-Secureというセキュリティ会社の社員だったことがわかり大炎上。その火の手はF-Secure社にまでおよぶ事態となっています。


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勘違いないように言っておくと、このTwitterアカウントが晒した個人情報というのは、Facebook上で公開されているものをまとめたに過ぎず、自分が勤務するセキュリティ会社のデータベース等を個人的に使用して集めたわけではありません。「個人情報漏洩」と書いているサイトも有りましたが、まとめられた情報はFacebookで本人が公表してる情報なんだから、これは正しい表現ではないでしょう。

もちろん、だからいい、というわけではなく、むしろ不用意だったというべきです。セキュリティ会社の社員が個人情報を晒した、と聞けば、多くの事情を知らない人は「会社のシステムを使って情報を集めて晒した」と勘違いするに決まっているからです。これは「料理人」と「毒」という言葉が並んでいたら、多くの人が「料理人が料理に毒を入れた」と連想するのと同じです。

 

社員の私生活の非行についての懲戒処分

この件についてF-Secureはすでに当該社員の処分を考えているようですが、会社が社員のプライベートの行為を対象に懲戒処分できるかというと、本件はどうかは置いておいて、通常は結構難しい

従業員の私生活での非行・不法行為で最も有名な事件となると横浜ゴム事件ですが、こちらは泥酔状態で民家に不法侵入し罰金刑に処された従業員を会社が懲戒解雇したところ、犯した罪や世間や会社に与えた影響と比して、処分が重すぎるということで懲戒解雇は無効とされました。

逆に言えば、私生活上の行為といえども犯した罪の大きさ、世間や会社への影響の如何で会社が労働者に対して懲戒処分を行うことはできるとも言えますが、通常の懲戒解雇処分と同等かそれ以上にハードルは高い、ということだけは頭の片隅においておかなければなりません。

 

扱い難しいバカッター

ただ、今回の一件の判断というのは過去の判例から読み解くのが難しいですね。というのも、今回の件というのは一頃流行ったいわゆるバカッター案件と考えていいと思いますが、現在のところ、バカッター事件の判例がありません。

バカッターでの炎上というのは、法律違反としては比較的軽微なことが多いのですが(バイトが業務用冷蔵庫に入ったとかね)、一般的な道徳感や倫理感とは大いにかけ離れているため、ネット上で大きく炎上してしまうのが特徴です。

炎上というのは言い得て妙で、炎上元となった行為を行った人物だけで炎上が終わることはまずなく、その人の家族や勤務先にもその被害はおよび、会社は大きな損害を受けます。じゃあ、その損害を労働者に請求できるかというとこれまた難しいので会社も困ってしまう。

言い訳みたいになりますが、法違反ではない、もしくは軽微にもかかわらず会社の損害は甚大、というネット炎上の特徴が、過去の判例と噛み合わず判断が難しいのです。

そのため、ネットの一部の人達に煽られて当該社員を懲戒解雇にしたとしても、その社員が裁判所に訴えてきた場合に、会社が勝てるとは限らない。刑事事件化していれば、少しは会社に有利だと思いますが、今のところその動きもありません。

 

SNSアカウントの有無だけでも聞いておく

現在では身辺調査代わりに求職者のFacebookアカウントをあらかじめチェックする会社も少なくないようです。こうした企業の対応には賛否両論ありますが、雇った労働者を簡単に解雇できない一方、採用に関しては会社にかなり大きな裁量がある、という、日本の労働制度ではこれは正直やらざるを得ないというのがわたしの考え。

Facebookは実名大前提なので、探せばすぐ見つかりますが、Twitterは今回の件のように匿名でやっていることが多いと思うので、会社が事前にチェックするというのは難しいかもしれません。匿名でもネットの暇な人達は本名から何から何まで特定しちゃうのですが、普通の企業にはまず無理でしょう。

ただ、それでも最低限やっておいたほうがいいと思うのは、労働契約時にTwitterやFacebookのアカウントを持っているかどうかの確認です。別にアカウント名まで提出させて、会社で監視する必要はないと思います(そのリソースがあればやってもいいかもしれませんが)。ただ、持っている人に対して、会社に迷惑をかけないよう別途覚書や誓約書を書いてもらったほうがいいとはおもうわけです。覚書や誓約書があるとないとでは、会社の懲戒処分の有効性は大きく変わってくるはずですので。

それに「持ってるのに持ってない」と言って契約を結んだ労働者がいた場合、それはウソをついたことになるのでそれだけで、懲戒処分の対象にできます(これ単独で、あんまり重い処分は難しいかもしれませんが、罪の足しににはなります)。

いずれにせよ、FacebookやTwitterは利用者が非常に多い上、公開範囲が広いため常に炎上リスクがつきまとうことを考えると、もしものときに備え会社内でしっかりルールを作っておいたほうがよいでしょう。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載。