労務管理と行動経済学

メルカリペイとメンタルアカウンティング(心理会計)

今日は行動経済学の話。

ちなみにカテゴリーは「労務管理と行動経済学」になってますが、労務管理とはあまり関係ありません(カテゴリーがそうなってるのは、カテゴリーの数をこれ以上増やしたくないから)。

どちらかというと、消費者のお金に対する心理、みたいなところを考えながら読んでもらえればと思います。

 

メルカリにハマった話

時間は今年のゴールデンウィーク頃まで遡るのですが、わたくし、この頃から2か月くらい、メルカリにハマっていました。

今さら? と言われそうですが、一応、理由はあります。

というのも、去年、PCを久しぶりに自作した関係で、前に作ったPCのパーツが余っていたのでそれを処分したいと思ったのが始まりで、最初はどこかのPCショップに買取でもしてもらおうと思っていたのですが、めんどくさがってるうちに、世界的な半導体不足もあってあれよあれよとPCパーツが高騰。

特に前のPCで使っていたGTX1060に関しては、メルカリで売れば、ほぼ買値で売れる状況がありました。

それもあり、メルカリを今さらながら始めてみたのですが、これがなかなかに楽しい。

あと、ちょうどこの頃にPS5が買えたこともあり、それまで使っていたPS4を売ったり、これまた買い換えて使わなくなっていたiphone等を売ったりしていると、あれよあれよと、結局、10万円近くの売上をあげることができました。

 

メルカリでの売上で散財に次ぐ散財

さて、メルカリで物を売ったことのある人ならご存知かと思いますが、メルカリではこの売上を自分の口座に振り込むこともできますが、売上をメルカリペイとして、そのままメルカリでのお買い物に使ったり、他のところでメルカリペイとしての支払いに使うことができます。

で、わたしは欲しいものをある程度買ったら残りは口座に、と思っていたのですが、どうしたことか、ポチる指がなかなかに止まらない。

買う物はレトロゲームが主だったこともあり、一個一個の額は大したことはないものの、かなりの数を買ってたので、一時期はほぼ毎日のようにメルカリ経由の商品が家に届くような感じでした。

 

メルカリでなら即買いなのに、リアルではめちゃくちゃ迷う不思議

そうしたなか、あるとき、メルカリではなくリアルの店舗での買い物中にちょっと欲しいものを見つけたのですが、値段との相談でなかなか踏ん切りがつかない、ということがありました。

これだけなら、誰にでもあることでしょう。

ただ、そこでふと思ったわけです。

例えばこの「ちょっと欲しいもの」がメルカリで同じ値段で売ってたらどうだろうか。

答えは明らかで、おそらく、迷わず買っていたでしょう。

つまり、わたしは無意識にメルカリの売上と自分の普段の財布を別々に分けて考えていたわけです。

 

メンタルアカウンティング

お金に色を付け、分けて考えるわたしたち

長々と書いてきましたが、このようなことは決して珍しくないというか、割と普通のことだと思います。

例えば、わたしたちは家賃や食費といった生活費と、趣味や交友のためのお金をきちんとではないにしても、だいたい分けています。

また、それが難しい場合は、用途別に封筒にお金を入れるといったように、物理的に分けることもあります。

 

お金に色はない?

しかし、古典的な経済学ではそうではないと考えます。

というのも、古典的な経済学では、人間は常に合理的に考える生き物であると考えているからです。

今回の話でいうと、お金に色はないと考えます。

お金には色がない、というのは、メルカリペイの残高と財布の中のお金や銀行口座に入ってるお金は全く同じと考える、ということです。

確かに、例えば、「貯金が100万円、財布の中が1万円、メルカリペイの残高が10万円」という資産を持つ人の場合、資産の合計額は111万円であり、メルカリペイの残高で物を買おうが、リアル店舗で財布から現金を使って物を買おうが、銀行口座から引き落としがあろうが、この111万円からお金がなくなっていくことには変わりありません。

よって、メルカリペイで物を買う場合も、現金で物を買う場合も同じ基準で買うかどうかの判断を下すのが合理的である、というのは理論だけなら納得できる話です。

 

メンタルアカウンティングとは

こうしたわたしたちの金銭への感覚と、古典的な経済学とのズレを、行動経済学者のリチャード・セイラーは「メンタルアカウンティング」と名付けました

日本語では「心理会計」「心の会計」と訳されるこのメンタルアカウンティング、これは要するに、普通の人はお金に色がないなんて考えず、心の中でお金に様々な色を付けて仕分け・管理している、ということを古典的な経済学との比較で言語化したものになります。

 

メンタルアカウンティングでナッジする

普段からやってることをわざわざ「メンタルアカウンティング」って名前があると知らされても、だからどうなんだと思う人もいるでしょう。

しかし、「お金には色がない」という合理的な経済学の考えと、「人はお金に色を付けるもんだ」というメンタルアカウンティングの考えのどちらも知っていると、普段の生活やビジネスで応用が利きます。

 

わたしはこうしてメルカリの無駄遣いをやめました

わたし自身の話に戻りますが、上記の件で、メルカリペイの残高を別腹扱いしてお金を使いすぎていることに気付いたわたしは、その日のうちにメルカリペイの残高を全て銀行口座に入れました。

すると、毎日のようにメルカリを開いては欲しいものをポチっていたわたしの指が、そもそもメルカリのアプリすらろくに開かなくなりました。

これは、お金の場所を一つにまとめることで、メルカリペイで買うのも現金で買うのも、自分の全財産からお金を使うことに変わりはない、という合理的な経済学の考えとわたしのメンタルアカウンティング一致させたことで実現できたことです。

 

メンタルアカウンティングはビジネスにつかっている業界とは

また、このメンタルアカウンティングをビジネスに活かしてる業種もあります。

それは証券会社。

実はGoogleでメンタルアカウンティングと検索すると、多くの証券会社のサイトがヒットします。

人間の心にはメンタルアカウンティングという性質がある、ということを解説しつつ、だからいろいろな口座を持っておいた方がいいよ、と言い、自分の会社で口座を作ってもらおうとしてるわけですね。

 

ナッジで生活を豊かに

このように、メンタルアカウンティングのような行動経済学の理論を応用して人の行動をより良い方向に導くことを、行動経済学では「ナッジ」といいます。

わたしの例とは逆に、すでに述べたように、用途別にお金を分けて封筒に入れておく、というのもメンタルアカウンティングによるナッジと考えることができます。

ナッジは決して万能ではありませんが、メンタルアカウンティングを始めとする行動経済学の知識があると、それらを使ってわたしたちの生活を豊かにしてくれるため、覚えておいて損はないでしょう。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所(名古屋)の代表。 人事労務と無関係に暮らしてたはずが、社労士だった叔父の病気を機に猛勉強。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 3冊の著書のほか「ビジネスガイド」「企業実務」など専門誌への寄稿、中日新聞での短期連載など、メディアでの執筆実績も多数

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