少し間が空いてしまいましたが、今回も働き方改革の復習・振り返りを兼ね、働き方改革でテーマとなっていた項目の現在について見ていきます。
今回は副業・兼業。
もしかしたら、働き方改革が始まって今までで最も動きのあった項目かもしれません。
この記事の目次
働き方改革関連法では法改正がなかった副業・兼業
副業・兼業もまた、前回のテレワーク同様、働き方改革関連法の成立時には特に法改正等は行われていません。
一方で、テレワークと違い、働き方改革の時点で、副業・兼業を推進するには制度面でかなり無理があることも明らかで、労働時間(時間外労働)、労働保険、社会保険、どれを見ても労働者が副業・兼業を行うことを前提とした制度にはまるでなっておらず、働き方改革のロードマップでそうした問題点を改善する必要があることが指摘されていました。
そのため、労働関連や社会保険の法律に縛られない形、つまり、個人事業主やフリーランスで副業を行うならまだしも、複数の企業等で雇用されて働くダブルワーク型の副業を行うのはかなり困難な状況にありました(過去形で書いてますが、実際には現在進行系でこの問題は残っています)。
働き方改革後に積極的に法改正や指針の改正が行われた副業・兼業
ダブルワーク型の副業の際に問題となるのが労働時間と公的保険ですが、これらについては実は、働き方改革関連法以降の法改正等で問題点の改善が行われています。
労働時間の合算と管理モデル
このうち、労働時間については令和2年9月に改定された「副業・兼業の促進に関するガイドライン」にて労働時間合算についての「管理モデル」と呼ばれるものが提案されています。
ただ、残念ながらこの「管理モデル」は副業・兼業の際にネックとなる「副業先となる会社の負担」を解決するものではなく、労働時間に関する副業・兼業に関する根本的な問題はそのまま変わっていないというのが実情です。
管理モデルについては以下の記事で詳しく解説しています。
法改正によって問題点がほぼほぼ解決した労災保険
労災保険もまたダブルワーク型の副業・兼業をする上でネックとなっている制度の一つでした。
というのも、令和2年9月に労災保険法が改正される前は、複数事業労働者が労働災害に遭った場合、労災の給付額が労災が起こった事業場の給与を基に決定されていました。
そのため、複数事業労働者が労災に遭った場合、給付が少なくなりやすいという問題がありました。
しかし、法改正後は複数の事業場の賃金を合算して給付額を計算することになり、こうした問題が解決されました。
また、法改正前は、長時間労働やセクハラ・パワハラといった業務上の労働者にかかる強い負荷に関しても、一つの事業場での負荷でしか判断していなかったのですが、こちらも法改正後は複数の事業場での不可を合算して労災に当たるかどうかを判断することになりました。
そのため、法改正前であれば労災と認められなかったようなケースも、法改正後は労災と認められるようになっています。
副業・兼業に関する労災保険の法改正についても、以前、記事にしているので詳しくはこちらを。
雇用保険は高齢者だけ先行する形に
雇用保険については、現行の制度では複数の事業場で労働時間を合算して「週20時間以上」という雇用保険の加入条件を満たしても、雇用保険に加入することはできません。
しかし、こうした問題についても、法改正が行われていて、令和4年4月より複数の事業場で労働時間を合算して「週20時間以上」となる場合、雇用保険に加入することができるようになります。
ただし、令和4年4月の時点では上記の形で雇用保険に加入することができるのは65歳以上の高齢者に限られます。
これは65歳以上の労働者を対象にその効果を検証するためです。
なので、将来的には65歳未満への適用が行われる可能性は高いと言えます。
唯一動きのなかった社会保険
社会保険に関しては、働き方改革以前から複数の事業所で加入できる制度となっています。
しかし、こと副業・兼業に関して言うと、これを前提としている制度とは言えません。
というのも、複数の事業所で社会保険に加入できる場合というのは、それぞれの事業所で社会保険の加入条件を満たしている場合に限られるからです。
しかし、社会保険の加入条件は特定事業所で労働時間が「週20時間以上」、それ以外だと通常の労働者の労働時間の「4分の3以上」となっており、複数の事業所でこれらの条件を満たすのは現実的ではありません。
また、雇用保険のように複数の事業所で合算して「週20時間以上」もしくは「4分の3以上」となっても社会保険の加入はできません。
こうしたことから、他と比べると社会保険については動きが少ないのが現状と言えます。
(ただ、社会保険に関しては「入りたくない」という人も一定数いるので、変に動きがあると逆に副業・兼業推進の邪魔となる可能性もありますが)
まとめ
以上です。
働き方改革関連法の時点で動きがなかったのが嘘のように、現在までに副業・兼業推進のため、様々な改正が行われていることがわかっていただけたかと思います。
一方で、労働時間の合算に関する問題は解決したとはとても言えない代物なので、個人・フリーランス型の副業・兼業に比べると、ダブルワーク型の副業・兼業を会社が積極的に解禁するのは現時点でも難しいのではと思ってしまいます。