助成金

誰が使うの?魅力薄なストレスチェックの助成金

2015年11月5日

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さて、行政からは助成金の営業マン扱いされてる我々社会保険労務士ですが、前回紹介したストレスチェックの助成金に魅力を感じる社労士っているんですかね? 同様にこの助成金に魅力を感じる会社もかなり少なそう。

 

社労士にとって魅力の無い助成金

まず、とにかく額が少ない。いや、労働者1人あたり500円って、ストレスチェックの相場を考えると、かなり大きな助成なんですけど、間に入る社労士からするとぶっちゃけ少なすぎ

なにせ、対象が50人未満の事業所が複数(2~10)ということは案件1つだと最大でも「49人×10事業所=490人」、これに500円かけても245000円。成功報酬で1割もらうとして社労士の取り分は24500円。これが最大です。現実には10人位の事業所が3つ、みたいなパターンも少なくないはずなので、となると30人×500円で15000円。その10%となると1500円。申請に2時間かかったら、時間あたりの報酬は愛知じゃ最低賃金以下。絶対やるか。

ちなみに、産業医の活動分は、1事業所あたり21500円×3で最大64500円。加えて、事業所ごとに最大64500円が助成されるので、10事業所なら合計で最大645000円が支給される。その10%だと64500円が最大額。悪くはないかもだけど、手間と見合うかどうか。(独立行政法人主体の助成金ってとにかく手間と時間がかかるのです)

というか、そんな美味しい案件はまずないし、産業医の活動が実際のところどれくらいあるのかも未知数でとても当てにできない。集団分析を行うかどうかは努力義務だからやらないところもあるだろうし、面接指導にしてもそもそも高ストレス者がいないかもしれない。

そもそも、50人未満の事業所でストレスチェックをやろうっていう会社って、労働者のストレスに対してすごく気を使ってるわけで、そんな会社が社員に長時間労働させるわけがない、となると、少なくとも会社の労働による高ストレス者って、あんまいないと思うんですよね。

というわけで、この助成金、少なくとも営業マンの1人(おれだ)の心は全然つかめておりません。

 

ほとんどの会社にとっても魅力薄

じゃあ、事業所にとってこの助成金はどうなの? となると、まず、ストレスチェックという制度はそもそも50人未満の事業所の場合、実施は努力義務であり強制ではありません。努力義務っていうのははっきり言ってしまえばやるところはやるしやらないところはやる、ってこと。それで構わないし、役所に文句言われたら「努力します」といえばそれで済んでしまう。

で、努力義務でもやろうというところというのは、さっき述べたように、すでに労働者に対するケアをきちんとしていてすでにストレスチェックを行っている可能性が高い。

逆に、ストレスチェックが努力義務になったからさあやろうという事業所って相当少ないはず。法律作ってる連中は、人間ってのは法律があるから法律を守ってると勘違いしがちだけど、人間の心はそんな風にできてない。大抵は法律を破ると面倒なことになるから破らないか(駐禁なんて正にそう)、破るほうが難しいかのどちらかなわけです(殺人とかね)。

で、ストレスチェックしようと思えば、お金もかかれば手間もかかる。助成金でお金の負担は小さくなるかもしれないが、ゼロにはならないし、手間に関しては変わらないどころか。助成金申請の分だけむしろ増える。

なので、この助成金で50人未満の事業所がストレスチェックを行うようになるかといえばその見込はかなり小さいはずです。営業マンの協力も得られそうにないですし。そもそも、事業所が1つしかない場合だと、どこか他の会社と協力しないといけない。それこそ面倒な話です。

 

ストレスチェック助成金を使う可能性のある会社

じゃあ、この助成金を使う会社がないのかといえばそういうわけでもありません。

まず、すでにストレスチェックを行っていて、事業所が複数ある50人未満の会社は無理なくこの助成金の恩恵をうけることができるでしょう。

また、今後増えそうなパターンは、複数の事業所のうち、50人を超える事業所とそうでない事業所が混在しているような会社。

どういうことかというと、例えば、本社は50人以上の労働者がいるが、支店は50人を超えてない、というパターンです。この場合、本社の労働者は法律で定められた義務のためストレスチェックを受けることができるはずですが、支店で働く労働者は、努力義務のため受けられない可能性があります。労働者を公平に扱うためにも、どこかの事業所がストレスチェックを行うのであれば、それ以外の事業所でも行うべきなのは言うまでもありません。そうした場合にこの助成金を使えば、会社の金銭的な負担を軽減できるわけです。

また、50人超えてる事業所は法律で決められてるからやるけど、それ未満は金もかかるしやりたくない、みたいに思っている会社にしても、助成金が出るのなら、とやろうと思う会社もでるかもしれません。

いずれにせよ、この助成金を使えば、本社は義務だからやる、支店は助成金が出るからやる、ということができ、そうした会社内での事業所の規模による不公平を是正できるわけです。つーか、最初から会社規模に応じてストレスチェックを義務化すれば、こんなことにはなんないんだけど。

 

というわけで、ストレスチェックという制度が変なら、助成金の方もやっぱり変というのがわたしの結論。

というか、本気でストレスチェックという制度を浸透させる気があるなら、義務化は会社単位にすべきだし、小規模事業所への補助は助成金なんかにせず、労災の現物給付にすればいい話。マイナンバーの法人番号使えば不正給付だって避けられるはずなんだし。

事業所単位とか訳のわからない構造になってるのは完全に厚生労働省や労働局、監督署の都合以外の何物でもありません。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 3冊の著書のほか「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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